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「個体差はあるがなくなった頭部は1〜2分程度で元通りになってしまう...」

壁外任務でそのことは知っていたけれど、改めてこうして座学として知識をいれるというのはまた違った気持ちで聞くことが出来る。

巨人がすぐ再生してしまう、というのは巨人を目にした人ならわかることだけれど知らない人にとってはただ恐怖材料でしかない。そのためか、みんながザワザワとした。

「教官!それでは...巨人は不死身ですか!?」

マルコがみんなの気持ちを代表して発言した。

「不死身ではない...」

教官は黒板におそらく巨人であろう後ろ姿を描いていく。

「巨人を倒す方法は1つ。

ナマエ副兵士長!巨人を倒す方法は」

「は、はい!
えっと...うなじの部分を削ぎ落とします」

呼ばれると思っていなかったので急に呼ばれてびっくりする。

「その通り。ナマエ副兵士長は壁外任務で直接巨人と対峙し今答えてくれたように後頭部より下、うなじにかけての部分を損傷させ、巨人を倒している。ここの部分を損傷した巨人は再生することなく絶命する」

そうして教官はわたしにとっては見慣れた立体機動装置やブレードを取り出し説明している。
でも、仕組みをよく知って使っていたわけではなかったのでこうして今きちんと仕組みを知ることができるのは今後のためにもとてもいい機会だと思った。

****

「うーん...。うーん...ここは...?あれ?違うな...。
こ、困った...わ、わかんないや...。

ねぇ、マルコ〜...」

「な、なんでしょうナマエさん」

技巧についてはわたしは本当に苦手だということがわかった。立体機動装置を組み立てるのだけれど、どのパーツも同じにしか見えない。

半べそをかきながらマルコに声をかけると彼は嫌な顔ひとつせず丁寧に教えてくれる。

「ごめんね...マルコ...。

本当にありがとう.....」

「いえ。

それにしても、ナマエさんにも苦手なことがあるんですね。もっと完璧な人だと思ってました」

はは、と笑いながらも手をとめずにここのパーツはこう、と説明をしてくれるマルコ。

「わたし、苦手なことばっかりだよ...?座学だって、わたし全然知らないこといっぱいだし...実戦で困ったことなかったけど、やっぱり学は必要だね...。

技巧なんて特に苦手だから、マルコはすごいや...」

そんなことをマルコと話していると誰かが近づいてくる。誰か、とは言わずと知れたジャンだけれど。

「おいおい、マルコ!何顔赤くしてんだよ!?」

「ジャ、ジャン!やめろよ!」

「ジャンはもう組み立て終わったの?」

「そうですね」

もう終わった、という言葉に目を丸くする。ジャンは態度こそあまり良くないけれど、実際1度習ったことを覚えるのもやるのも得意で優秀だ。

「は、早いね...!みんなすごい!」

「ま、まぁ、こんなの俺の手にかかれば余裕なんで!」

「あ、ナマエさん、ここ違いますよ」

「んん...?

ほ、ほんとだ!!ありがとう、マルコ!」

「お、おい...!む、無視...?」

そんなこんなでどうにかわたしも組み立て終わり、みんなの様子を見て歩く。

すると、アニの手が止まっているのが目に付いた。

「アニ、技巧はあんまり?」

「.....まぁ」

ふいと目を逸らしたのを見て小さく笑う。アニは嘘が苦手なのかもしれない。

「...何が可笑しいんですか」

「え、いや...わたしと同じだなぁって。わたしも技巧苦手で、さっきまでマルコに教えてもらってたの。

だから...えっと、ここは違うパーツだよ」

わたしの言葉に立体機動装置に目を戻し確認をしてから、間違いに気付いたのかアニは修正する。

「.....どうも。

あと、何でそんなに私に構うんですか」

構う、そんなことを考えたこともなかったので驚く。

「構う...?

構ってるわけじゃないよ。わたしはただ...アニと仲良くになりたいだけ、かな!

あともっとわたしを指導員として頼って欲しいかも!」

「...お人好し、なんですねナマエさんは」

お人好し、と面と向かって誰かに言われたのは初めてだ。でもアニが本気で嫌悪からその言葉を言ったわけではない気がした。本気だったら、そんな悲しそうな顔はしない。

「えへへ、お人好し...かも!

だから、わたしはアニにお人好しなことこれからもたくさんするし、アニだって何かあったらわたしに言って欲しいな!

アニ、優しいのに1人でいるのはもったいないよ」

アニは目を少しだけ見開いた。そしてふっと笑う。あぁ、わたし、アニの笑顔好きだなあ。もっと笑えばいいのに、と思う。

「...じゃあ、そんなお人好しのナマエさん。

ここのパーツはどこの部分か教えてくださいよ」

「もっちろん!」


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