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「このあとは2人1組になって訓練してねー!」
ナマエさんの声とともに全員とりあえず2人1組をつくって形式上、練習を始めた。もちろんその中には真面目な奴とサボっている奴もいる。
そういう訓練兵をナマエさんは見かけても注意することはなかった。
「ナマエさんってあんなに小さいし細いのにどこにお前すら投げ飛ばすほどの力があるんだろうな。
今の練習だって、ナマエさんが力に物を言わせればサボってる奴らも真面目に参加しそうなのに」
俺はライナーと組になり練習をしていた。とりあえずお互い真面目に練習をしていたが、ふと気になってライナーに話しかける。
「ジャンがああ言ったのもわかる気がするが、やはり副兵士長としての実力は本物だったってことだろうな。副兵士長って肩書きがなけりゃ、ただ可愛らしい少女って感じだが。
ナマエさんがわざわざ不真面目なヤツらに声掛けねぇのも自分次第だと思ってるからだろ」
真面目にやってる奴らには積極的に声を掛け、指導をしている姿を見るがサボっている奴らには何も声を掛けず素通りするのは何となく俺としては意外だった。まぁそういう奴らは後で教官に見つかって絞られるのだろうが。
そんな話をした後、ライナーはアニに喧嘩を売り、俺もライナーも間もなく宙を舞う。そんな一部始終を見ていたのか見ていなかったのかは知らないが、ナマエさんが満面の笑みでこちらに来た。
「またその動き!ねぇねぇ、アニ!
わたしにもその動き、教えてくれないかな?」
「.....いえ。
私、誰かに教えるとか苦手なので」
明らかにナマエさんを遠ざけた。焦ってナマエさんに目をやるも何も気にしていない、という風な顔で先程と変わらない笑顔を浮かべていた。
「そっかー、ざんねん!」
誰かに教えられなくてもナマエさんは十分強い。それなのに誰かから教えて貰い、それを自分のものにしたいというナマエさんの向上心に目を見張った。
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訓練も終わり、いつものようにわたしも含め訓練兵たちは食堂に集まり、1日の反省をしたりと話しながら食事を取っていた。
「一緒にご飯食べてもいいかな、アニ!」
そう声をかけるとアニはちらりとこちらを見てからまた食事に戻る。
「...どうぞ」
「ありがとう」
席について食事を取るが、何となくわかってはいたけれどアニは何も話さず黙々とご飯を食べるだけ。これじゃあ一緒の席についた意味がない。
「アニ、本当に強いんだね!びっくりしちゃった!ああいうやり方もあるんだなぁって新発見!」
「.....でもナマエさんに負けましたけどね」
「あれは勝ち負けが大事じゃないし、久しぶりにわたしも焦ったよ...!」
「そう...ですか」
そんな時、突然エレンとジャンが大声を出した。そう。また2人が喧嘩を始めてしまった。
この光景はここに来てからよく見るけれどそろそろどうにかしなければ。
「ちょ、ちょっと...!エレン!ジャン!」
席を立ったと同時にジャンの体は宙に舞い、床に叩きつけられる。
「...!」
その動きはアニのそれと似ていて。
「てめぇ!!何しやがった!!」
「今の技はな。お前がちんたらやってる間に痛い目に遭って学んだ格闘術だ。
楽して感情任せに生きるのが現実だって?
お前...それでも兵士かよ」
「兵士が何だって?」
そしてまた2人は睨み合う。今度またこうなったらわたしも力で止めなければ、と思った時扉が開かれ教官が現れた。
「今しがた大きな音が聞こえたが.....誰か説明してもらおうか...。」
みんなが一様に息を呑む中、ミカサがスっと手を上げた。
「サシャが放屁した音です」
「えっ!?」
こうして、サシャのおかげでどうにかなった。
そしてまた対人格闘術の訓練の日、エレンのおかげか真面目に練習に参加していなかったジャンも理由はどうあれ練習に励んでいた。
ぐるりと練習を見回しているとアニがエレンにあの技を教えているようだったのでわたしも混ざろうと近づいた。
「アニ!わたしにも教えて!」
そう言うとアニは硬い表情からふっと少し笑みを作る。
「.....わかりました」
「ほんと!?やったー!
よろしくね、アニ!!」
まず初めに、とアニがエレンと訓練しようとする中エレンが抵抗するもまた足を蹴られて悶えてるのを見るのは数秒後。