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「今日は対人格闘術の訓練をやるよ!」
「はい!」
みんなの声に笑顔で頷く。
「まず最初にみんなには1人ずつわたしと組み合ってもらいます。
ルールは簡単!みんなはわたしからこの木でできた短刀を習った刃物の対処法の形で、奪えればみんなの勝ち!もちろん習った形ではなくて、応用が出来るならそれでも全然いいからとりあえずわたしからこれを取り上げることができればいいかな。もちろんみんなは全力で奪いに来ること!
じゃあ、昨日言った通りまずはジャン!」
「まじかよ...」
わたしの呼びかけにジャンのそんな言葉が聞こえた。そうしてジャンは気だるそうにしてわたしの元へ来た。そんなジャンを見上げる。
「ジャン、全力できてね」
「いや...ナマエさん...。
全力でやったらナマエさんの骨、折れるじゃないですか」
「うん。じゃあ、骨折る気持ちで突っ込んできて。
あ、みんなもそれくらいの気持ちできてね!」
「.....は!?」
ジャンが驚愕したような焦ったような顔をする。
「よし!じゃあ、はじめよっか!
えっと、誰か合図を.....あ、アルミン!合図してくれないかな!」
「も、もちろんです!」
そうしてお互い持ち場に着く。一応ジャンもやる気になってくれているようだ。
「ほ、本気でいきますからね...」
「もちろん!わたしはここから動かないからいつでもきてくれていいよ」
「で、では.....。
はじめ!」
アルミンの合図とともにジャンは一直線でわたしに向かってくる。別に動きが遅いわけではない。けれど、あまりにも単純だ。
「よ、っと」
「.....うぉっ!?」
ダン!という音ともにジャンは一回転する。そうなった本人は突然のことに状況を理解していない顔をしていた。
「ど、どういうことだよ...!?」
地面に座ったままのジャンに手を差し伸べて立たせる。
「今見てもらったとおり、体格差とかは関係ないからわたしには全力で向かってきてほしいです。
じゃあ、次々いくね。
つぎは.....エレン!」
「は、はい!」
そうして同じように合図を出してもらい、エレンはわたしに向かってくる。でもエレンの動きはジャンのものとは違くて、何だかこういうことになれているような動きだった。
「せいっ!」
「うわっ!」
少し驚いたけれど、だからと言って型が体についているというわけでもなかったのであっさり投げることができた。
「いたた...ナマエさん、本当に強いんですね...」
「だ、大丈夫?
エレンの動きを見て思ったんだけど、こういうことに慣れてる?」
「あ、...まぁ、そうですね」
「そっか!がんばってね!
じゃあつぎは...サシャ!」
「はい!」
「えいっ!」
「はぅあ!?」
「つぎ!」
「つぎー!」
「つーぎー!」
「つぎっ!」
指名しては投げていく、の繰り返し。指名される兵士たちの顔色は最初よりずっと暗かった。
「えっと、つぎは.....うん!ベルトルト!」
「は、はい!」
わたしの倍は身長があるだろうベルトルト。彼は背はとても大きいけれど、気は弱そうだった。
「じゃあ、合図よろしくね」
「はい!.....はじめ!」
ベルトルトはこちらに向かってきて、わたしの短刀を奪おうとする。もちろんそれは習った形のとおり。でも、彼は確実に手加減してる。
「っしょ」
「うわっ!!」
ドテン、と少し痛そうな音がした。そうしてゆっくりベルトルトは立ち上がる。
「ベルトルト、いま、手加減したでしょ。力をいれるのにためらった。
わたし、全力できてね、って言ったよ」
「す、すみません...。
力入れたら本当に折れそうだったので...。その、ナマエさん細いから...」
「うぅん...。そんな簡単に折れないんだけどな...。
とりあえず、今度からちゃんと全力でね!
つぎは、アニ!」
「...はい」
そうしてアニが出てくる。この子はなんとなく、ずっと気になっていた。訓練兵団に入団してから単独行動が目立つ子。
そうして同じように合図をかけてもらう。その瞬間、アニはものすごい勢いでわたしに向かってくる。それは今までの訓練兵の子たちとは格段に違う速さだった。
「.....わっ!」
足を狙われ、驚いて後ろにバク転をして交わす。それでもアニはすぐに切り替えて狙ってくるから切りがない。見たことのない動きだった。
いつまでも避けてもいられないので、攻撃を受ける形のまま横に避けて素早く腕をつかみ投げる。
「.....あ、あぶなかった...。
アニ、すごく強いんだね...!見たことない動きだった!」
「...ありがとうございます」
そのあと、ミカサとも組んだがミカサもとても強くて驚いた。今期の訓練兵たちはみんな強い子たちがそろってる。