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エレンが無事訓練兵として訓練を受けられると決まった。その日の夜、いつものようにわたしも食堂でご飯を食べようと先につこうと思っているとエレンたちが目に入った。
「隣、いいかな?」
「ナマエさん!もちろんです!
今日は本当にありがとうございました!!」
エレンがキラキラ(ギラギラ?)した目でそう言うので、わたしも嬉しくなる。アルミンの隣に座りエレンと向き合う形になる。
「わたしは何もしてないよ、エレンが頑張ったんだから!
でも本当によかった。わたしも嬉しい」
「いや、ナマエさんのおかげで装置の故障にも気付いてもらえたんですから...」
「.....いや、あれは...。
わたしが言わなくても、たぶん教官は気付いてたと思うな...」
「ナマエさん、何かご存知なんですか?!」
アルミンが驚いた顔でこちらを見てきたからちょっとびっくりしたけれど、何となくね、と答えた。確証はないけれど、あの装置があんなふうに壊れるのは明らかにおかしいから。
「.....そういえば、ナマエさんって調査兵団の任務、してなくていいですか?」
エレンが微妙な空気になったのを察してか話題を変えてくれた。わたしにも装置の話は勘としか言えなかったから助かった。
「うーん、これが任務っていうか...エルヴィンから直接104期生の特別指導員としてここに来るよう言われてたからね。
本当は壁外調査にも参加したいけれど、今はこっちが優先」
「ナマエさん、本当に兵士なんだな...。
なんか...」
エレンはそのあとの言葉を濁しながら微妙な顔でわたしを見る。
「.....なんか?」
「兵士には見えない大きさなんすね」
この言葉は目の前のエレンから発せられたわけではなかった。驚いて声を出した人を探すとそこにはあまり人相のいいとは言えない顔の少年がいた。
「ちょ、ちょっとジャン!
上の立場の人への発言には弁えないと!!」
「大丈夫だよ、アルミン。ありがとう。
...ジャン・キルシュタイン、だよね?
わたしが兵士に見えるか見えないかは明日わかるから安心して大丈夫だよ」
「ど、どういうことっすか...」
「...対人格闘術の訓練」
ミカサの発言にこくりと頷く。
「これでもわたしだって副兵士長の立場があるからね!小さかろうと大きかろうとその事実には変わりはないよ。
そういうことだから、明日の対人格闘術の訓練はジャンからやろう!」
ちょっと大人気ないかな、なんて思ったけどしょうがない。背のことに関しては怒ってもいいだろう。
「.....ナマエさんって、大人気ないですね...。
実際何歳なんですか?」
エレンに呆れた顔をされる。
「わたし?今15歳!」
「「えっ」」
「え?」
エレンとアルミンが声を合わせて驚くのでわたしもつられて驚いてしまう。そんなに驚く程だっただろうか。
「す、すみません...。僕、同い年かと思っていました...」
「お、俺も...もしかしたら俺より年下なんじゃねぇかと...」
「ヒ、ヒドイ!
確かに年齢は近いって言ったけどみんなより年上だよ...。
そんなにわたし、小さい...?」
かなりショックだ。小さいことは知ってる。でもそんなに年齢が低く見えるのだろうか。
「...ナマエさんは、背が小さいから子供っぽく見えるのは事実だと思います。
恐らく訓練兵と比べても1か2を争う小ささかと」
「えっ」
「お、おいミカサ...!そこまで言うんじゃねぇよ!!」
ショックで食事の手が止まる。確かに訓練兵を見た時、クリスタ、という子が1番わたしの身長に近いとは思ったけれど。ジャンの時もそうだったけれど、面と向かって言われると素直に傷つく。
そんな時、わたしの視界の脇に手が伸びているのが気付いた。
「.....ナマエさん。そのパン、食べないんですか...?」
「サ、サシャ!?」
犯人はサシャだった。どうやらまだ手を付けていないわたしのパンを狙っていたらしい。
「だ、ダメだよ!わたし大きくなるために全部食べるように言われてるもん!」
「あああっ!」
急いでパンを口に運んだ。
今年の訓練兵は少しばかり個性が強いかも、と思う一方、この賑やかさも嫌いではなかった。