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「俺は」

「え?」

わたしが散々泣いたあと、リヴァイは突然口を開いた。

「俺はお前と同じように地下街出身だ」

「.....え」

突然のことに目を丸くし口からは短い音しかでなかった。

「地下街では同じように仲間と過ごし、その後エルヴィンによって調査兵団に引き抜かれた。

...いや、違うな。俺達はある資料を手に入れ、エルヴィンを殺すために調査兵団に入った」

「.....ど、どういうこと...?」

ヒュ、と息が止まる感覚を覚えた。地下街出身だということにももちろん驚いた。
けれど、エルヴィンを...殺すため?

「.....依頼された仕事だ。仕事をやり遂げれば地上での居住権が貰えると条件も提示されてな。
初めての壁外調査でそれに蹴りを付けるはずだった。

だが、そこで俺は仲間を失った。地下街で初めてお前と会った時、お前がそうであったようにな。

俺はその場に来たエルヴィンを殺そうとした。しかし、エルヴィンは全てわかっていた。俺達があいつを狙っていることも資料のことも」

「.....」

わたしはただ、リヴァイの話を聴くことしかできない。はじめてだった。リヴァイが、自分のことを話すのは。

「...エルヴィンは、後悔するなと言った。

後悔は、次の決断を鈍らせる、と。
俺はあいつが俺の見えていない何かを見ていると思った。だから、俺はあいつについて行くことに決めた。

今回もそうだ。ナマエ、お前を調査兵団に連れて行き何かを得られると、あいつは俺には見えないことが見えていた」

「.......リヴァイも、大切な人を、失ったの?」

顔を上げリヴァイの表情をうかがう。枯れるくらい泣いていたはずなのに、なぜだか目頭がまた熱くなる。

きっとわたしはまた泣きそうな顔をしているんだろう。リヴァイは、少し悲しそうに笑った気がした。

「.....そうだな。
だが、俺はこの選択を後悔はしていない。

ナマエ、お前も仲間の死を後悔するな」

「.........うん。
もう、わたしは迷わない。

何が正解だなんて、わからないけど、でもわたしはわたしの人生を生きるしかないから。

リヴァイ.....話してくれて、ありがとう」

静かにリヴァイはわたしの頭を撫でる。その行為に、話を聞いていた間堪えてたはずの涙がぽろりと流れた。

「.....は、お前の涙は枯れるってことを知らねぇのか」

「あ、あれ...泣く予定じゃなかったのに...っ。

わたしばっかりが辛いんじゃなかった...。リヴァイも、わたしよりずっと辛い選択に迫られてきたんだなって思ったら...ここが、痛くて...」

ぎゅうと、胸のあたりを掴む。リヴァイは強くて、どんな時だって悲しい顔だって辛い顔だってしなかった。でも、わたしよりたくさん辛くて悲しいお別れをリヴァイはしてきてるんだ。

やっぱり、わたしは大切な人を守りたい。もう守られる立場じゃなくて、守る立場になりたい。

「...わたし、リヴァイのことも守るから。
リヴァイの辛いことは、わたしも背負う」

「そりゃ、期待できそうだな。

それまでは精々俺に守られていればいい」

指の腹で涙を拭ってくれたリヴァイは、それこそ本当に笑っていた。つられてわたしも笑顔になる。

わたしには、ここに、たくさん守りたい人がいる。


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