閑話22.5@:青と赤
「.....ハンジ」
扉の隙間から大きな瞳がこちらを伺っていた。
「ナマエちゃん!どうしたんだい?」
扉を開いくとナマエちゃんの姿がいつもと違った。
「おや?いつもと格好が違うね?」
「え!」
そんな言葉をかけるとナマエちゃんは瞳をキラキラさせた。
「ハンジ、気付いてくれた!みんな全然気づいてくれないの!
ねぇ、ハンジ!見て見て!」
そう言ってナマエちゃんは私に背中を向けた。いや、厳密には髪の毛を見せるように後ろを向いた。
ナマエちゃんの髪の毛はそれはそれは丁寧に結われていて、そこには赤いリボンが結ばれている。この丁寧さはまだ幼い彼女に出来るようなものではなく、誰がこれをやったのか、直ぐに検討がついた。
「リヴァイがやってくれたんだね?」
「ふふ、そうなの!
このリボンね、前に街に出かけた時に綺麗だなぁって思ってたんだけど、その時は買わなくって...。でもね!今日リヴァイがこれくれたの!
絶対ずーっと大事にするんだ!わたしの宝物!」
顔いっぱいに笑顔を浮かべるナマエちゃんはとても幸せそうで。
「リヴァイもなかなか粋なことするねぇ」
「リヴァイ、訓練の時はすっごく厳しいけど、やっぱり優しいんだ!」
よくナマエちゃんを見てみると確かに出来たばかりの傷のようなものが出来ていた。そんな厳しい訓練に音を上げずに頑張るナマエちゃんは本当にすごいと感心する。
「その赤いリボン、ナマエちゃんにとってもよく似合っているよ」
「ありがとう、ハンジ」
赤と、まるで対象的な君の瞳によく似合ってる。
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「ナマエ、前髪を切ったんだね?」
美味しそうにクッキーをかじっていたナマエの動きが止まり、徐々に目がきらきらとしていく。
「気付いてくれたの、エルヴィンが初めて...!」
「はは、そうなのか」
「うん!ミケなんてね、わたし、こうやって指さしてアピールしたのにそれでも気付いてくれなかったの!
そんなにわからないかなぁ...」
うーん、と腕を組んで考えるナマエについ笑みがこぼれる。わからないわけがないのだ。かつては前髪で見えなかった色が、今ははっきりと見える。
「今まで前髪で隠れていた、ナマエの綺麗な青が見えるようになったよ」
「青?」
「ナマエの瞳はとても綺麗な色をしているのを知ってるか?
とても深い青だ。まるで夜明け前の空の色だ」
大きな瞳がさらに大きく見開かれる。
「そうなの?
.....知らなかった。
前髪はね、リヴァイが切ってくれたの!リヴァイは、わたしの目の色に気付いてくれてるかな」
「気付いているだろうな。
きっとナマエの前髪を切ったのも、その青色を見たかったんだろう、と俺は思うよ」
ナマエはぽかんとした後、破顔する。
彼女の赤も、青も1番最初に気付くのはいつだってリヴァイだ。それが何だか少しだけ妬けてしまった。