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「手加減はしなくていいんだね?ナマエちゃん」

「うん...!手加減はなしで!」

リヴァイによる毎日の特訓で格闘術にも自信がついてきて、今日はハンジが練習を見てくれるということだったので、ハンジで訓練の成果を腕試しをしよう、ということになった。

「よし、行くからね!」

「うん!」

そう言うやいなやハンジはわたしに向かって走り出す。

しっかりと目でハンジの動きを追う。

.....今!

バターン、となかなか壮大な音が響き渡った。
そして地面にはひっくり返ったハンジが目を丸くしている。

「...や、やった!」

「あ、あれ...?
私今何が起きたのかわからなかったよ...!

ナマエちゃん、すごいね!」

立ち上がったハンジに褒めてもらってつい気分が舞い上がる。

「ありがとう、ハンジ!
リヴァイにはまだまだかなわないけど...。

あっ、体痛くない?大丈夫?」

「もちろん大丈夫だよ!

まだ半年くらいしか経っていないのに目に余るスピードでナマエちゃんは急成長したね!

この髪型も板に付いてきたみたいだ」

あの日、リヴァイに髪を結ってもらった日以来、わたしは訓練をする日は必ずあの髪型で、リボンは肌身離さず毎日髪を結ぶのに使っている。

周りから見ればただの赤いリボンかもしれないけれど、わたしにとっては宝物。

他に代わりなんてない大切なものなのだ。

そんなことを思っているとハンジはそれにしても、と言葉を口にした。

「本当にナマエちゃんは思った以上のスピードで力をつけていくから驚きだよ。

まだ壁外に出ていないからどうなるかわからないけど、エルヴィンの言ってた通りに人類の希望になってしまうかもね」

そう言ってハンジは笑いながら優しく頭を撫でる。

...人類の希望。ここに来た時からわたしは何度もその言葉を耳にした。巨人を倒すために生まれてきたらしいわたしは、本当に希望になれるのか。
でもそれが、わたしの役目なら、やるしかないのだ。それが、わたしの生まれてきた理由なら。

****

森の中を立体機動装置で移動しながら全体に目を向ける。すると木の影から巨人を模した板のうなじに目掛けて速度をつけてブレードを下ろす。

.....縦1m、横10cm.....。

ザシュッ、という音を立ててそれのうなじは深くえぐれた。

次々と現れるソレに同じようにブレードを下ろし続ける。

「ふぅ.....」

「ナマエ、頑張っているな」

「あっ、エルヴィン!リヴァイ!」

最近は巨人のうなじを削ぎ落とす訓練をよく行う。日々の訓練にはもう慣れた。何せここに来てから、もう1年が経とうとしていたから。

リヴァイはエルヴィンと話があるということで、訓練の途中でいなくなってしまったのでわたし1人で訓練をしていた。
エルヴィンはわたしの削ぎ落したうなじの深さを見てから、わたしに向き直る。

「1年程度でこの成長ぶりはさすがだな。

立体機動装置の仕組みもよく理解しているようだ。ハンジから、格闘術も見違えるほど上達したと聞いたよ」

ハンジがわたしのいない所でもそう言ってくれていることが嬉しかった。

「ありがとう!

でも、まだまだだよ.....。わたし、もっともっとがんばらなくちゃ」

「あぁ、期待しているよ。

1年が経とうとしている今、ナマエに話したいことがある」

やけに真面目なトーンになるエルヴィンに首を傾げる。
エルヴィンは1度リヴァイに目をやってからわたしを見つめた。

「今度の壁外調査にナマエも参加してもらうことになった」

ドク、と心臓が大きく音を立てる。

壁外調査。リヴァイは強いからよく壁外調査に参加しているのは知っていた。けれど、実力のないわたしにはまだまだ先だろうと思っていたその言葉が、今わたしに向けられている。

「わ、たしが壁外調査に、参加するの...?
まだまだわたし、弱いよ...?」

驚きでうまく言葉が繋げないでいるとリヴァイが口を開く。

「...まだ足りないところはあるが、もうお前は壁外調査に参加するべきと俺達が判断した」

壁外調査は何が起きるのかわからない、とよくリヴァイから聞かされた。
その場所へわたしは踏み入れることになるのだ。

そうだ。今日の日のためにわたしは毎日訓練してきた。壁外に行くためにわたしは訓練してきたんだ。それが、わたしのいる理由。

「...わかった。

わ、わたし、足でまといにならないように、がんばるね!」

そう言うとふっとエルヴィンの表情が和らぐ。

「大丈夫だ。

今回は、ナマエは積極的に抜刀して巨人と戦う必要は無い。あくまで他の兵士達に守られながら調査することを目的としてくれ」

その言葉を聞いて少しだけほっとする。

「うん!わかった!」


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