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「んんんん...」

「うーん、やはり少し大きいね...。

まぁ、もう少し経ったら大きくなることを期待して、ってことで!」

「.....期待じゃないもん、大きくなるもん」

思った以上にわたしの身体の回復が早かったのか、エルヴィンから少し早いが訓練に移ってもらう、と言われ今日は初めての訓練の日だ。

訓練にはもちろん、団服を着なくちゃいけないからそれのサイズをハンジと合わせていたのだけれど、わたしの身長に合うものはなくて今着ている少し大きいサイズからしかないらしい。

リヴァイやハンジのようにかっこよくジャケットを羽織れないのがなんだか悲しい。

「背なんてすぐに伸びるだろう!

エルヴィンもリヴァイも待っているから行こうか」

「う、うん...なんか緊張する...」

期待されて連れて来られたからこそ、自分にそこまで実力がなかったら...と不安になっているとハンジは優しく頭を撫でてくれた。

「大丈夫さ。

初めては何だって緊張するだろうけど、自分を信じてやればいい」

俯いていた顔を上げるとハンジは優しく笑っていた。

「...うん!」

****

ハンジに連れてこられたのは木がたくさん生えている森、のようなところだった。

「おっ待たせー!

どう?!ナマエちゃんの団服姿!」

「やっぱりでかいな。
それ以上小さいサイズはなかったのか」

「これが1番小さいサイズだって...」

団服のサイズが体に合ってないことをやっぱりリヴァイに言われてしまった。

「団服のサイズはナマエが成長すれば問題なくなるだろう。

では、想定していたより少しばかり早いが今日からナマエの訓練を始めようと思う。

まず適性検査だ。これが出来なければ立体機動装置を使うことも出来ないからな」

「うん、お願いします」

腰にロープを繋いで体を固定する。

「じゃ、ナマエちゃん、上げるからね」

「うん」

両足が地面から離れる。全身のベルトでバランスを取るように意識する。

「おぉおお!ナマエちゃん、全然ブレがないよ!
これは立体機動も期待できそうだ!」

「そもそもこれが出来なきゃ話にならないがな」

ハンジとリヴァイの話を聞く限り、適性検査は大丈夫そうだとほっとする。

ハンジがわたしを降ろし、両足が再び地面に戻ると地面に安心感を覚えた。

「わたし、大丈夫だった?」

エルヴィンに聞くと彼はしっかりと頷いてくれた。

「あぁ。

安定感がある。これなら立体機動でも期待できるだろう」

適性検査の方はエルヴィンからも大丈夫だ、という言葉を貰えて本当の安心を覚える。
ほっとしているとハンジがエルヴィンとリヴァイに何やら提案をしていた。

「ねぇ、ナマエちゃん。ナマエちゃんは1度見た事を真似するのって得意?」

1度見た事を真似する、なんて今まで意識したことがなかったのでよくわからなかったが、1度言われたことや見せてもらったことを覚えるのは苦手ではなかったので頷く。

「よし!じゃあちょっと荒療治みたいになっちゃうけど、ナマエちゃん!

さっそくだが立体機動装置を使って移動してみよう!初めて使う子が上手く使えるなんて思ってないから、出来なくて全然大丈夫だから!

今からリヴァイが立体機動装置で移動するからそれを見てて!」

「えっ!

.....う、うん...。たぶんできないから、あんまり期待しないでね...」

もともと期待なんかされていないとは思っているけれど、あまりにも急な話にさすがに困ってしまう。

「これに関しては出来なくても仕方がねぇだろ。

アンカーを挿して、ガスを噴出させて移動する。
まぁこればかりは言葉で説明してもわからねぇだろうから、よく見てろ」

リヴァイはそう言うとアンカーと呼ばれた先の鋭いものを遠くに飛ばしてあっという間に体を宙に浮かせて森の中へ消えていく。
それはまるで羽が生えたみたいだった。
リヴァイを目で追って、どのように移動しているかをよく観察する。

そうしてリヴァイはまた元の場所に戻ってきた。

「す、すごかった...!

わたしに使いこなせるか不安...」

腰元に付けられた立体機動装置に目をやる。
するとエルヴィンが、出来なくてもきちんと教えるから大丈夫だ、と言ってぽんと頭に手を置いた。

「じゃ、ナマエちゃん、行ってみよう!」

「ぅうう...がんばる...」

3人の視線を感じながら、リヴァイの動きを思い出す。
アンカーを適当な場所に挿して、パシュ、という音と共に体を襲う浮遊感。

.....体が、軽い...!
まるで空を飛んでいる気持ちだった。肌を掠める風や体の浮遊感が不思議と、心地よかった。
一通り移動して、出発した場所に戻るとリヴァイとエルヴィンはいつも通りの顔をしていたが、ハンジがすごく変な顔をしていて、やっぱり上手く出来ていなかったのかな、と気分が沈んでしまう。

「や、やっぱり...わたし出来てなかったよね...」

何を言われるのかわからなくて下を向くと、突然ハンジに肩を掴まれる。

「ナマエちゃん!ナマエちゃんは、立体機動装置使うの初めてだよね!?」

「えっ、う、うん...もちろん...」

ハンジは息を荒らげながら言葉を続ける。

「とても初めてとは思えない動きだよ...!
あの動き、リヴァイを真似たのかい!?」

「な、なるべく見たとおりには動こうと思ったけど...」

「あれは真似というか、最早動きを自分の物にしていたよ!

やっぱりナマエちゃんの能力は未知数だ...!」

ハンジの勢いに押されて結局どういうことなのかわからないままオロオロとしているとリヴァイが口を開いた。

「こいつが言いてぇのは初めてで完璧に立体機動装置を使えてるってことだ。

...少しガスを蒸しすぎていたがな」

リヴァイの言葉にわたしは目を丸くした。

「え、えぇっ、本当に?」

「ああ、本当だよ。

元々素質がある上に、遺伝子レベルでどうすればいいのかわかったんだろう。

もっと訓練すれば更に自由に動けるようになる。頑張ってくれ」

エルヴィンのその言葉に安心感と笑顔が零れた。

「うん!」


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