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「おはよう、リヴァイ。
今日もいつもみたいにお掃除するね」
ここに来てから1ヶ月が経ち、ハンジやエルヴィンのお手伝いをする日もあれば今日のようにリヴァイの部屋のお掃除をする日々。
1ヶ月ここで過ごしていると、他の兵団の人とも仲良くなった。
そしていつものように掃除道具を手に取り、掃除の準備をする。
「おい待てナマエ」
「え、わ、わたしなにか間違った?」
掃除に取り掛かろうとした時にリヴァイに止められ掃除道具を奪い取られてしまった。
「違う。
今日はお前も俺も休みだ」
「つ、つまり.....?」
初めての休みの日、わたしは一体何をするんだろうと息を呑む。
「出掛ける」
出掛ける、の言葉をうまくわたしは飲み込めない。出掛けると言ってもどこへ?首をかしげているとリヴァイは窓の外へ目を向ける。
「街へ出かける」
「街!?
わ、わたし、街へ出られるの!?」
「ああ。
そもそもお前は暮らすにはものが少なすぎる。服だって今着てるやつと借りた1着しか持ってねぇだろう。
今日はそれを買いに行く。さっさと準備しろ」
「うん!すぐ準備する!」
地上へ来てからの初めての街だ。ふわふわと心が踊る。わたしは急いで準備をした。
****
「わぁ...!人いっぱい...!」
街は活気づいていて、どこを見ても人ばっかりだった。
「おい、手ぇ離すなよ。迷子になるだろうが」
「うん!」
ぎゅっとリヴァイの手を離さないように握った。地上の世界はキラキラしていて、本当に壁の外に巨人がいるのだろうか、と疑問に思ってしまうほどだった。
リヴァイに連れられるままに歩いていると、あるお店に入った。お店の中を見ると、綺麗な服がたくさんある。
リヴァイはお店の人に何かを言っていて、お店の人はわたしを見て微笑む。
そうして数着、服を持ってきてくれた。
「おい、これでいいか」
お店の人が持ってきてくれた綺麗なワンピースやブラウスやスカートがわたしの目の前に並べられる。
「こ、こんな綺麗な服、わたし着ていいの...?」
「あぁ?
着ていいも何も服すらまともに持ってねぇだろうが。
これでいいんだな」
「...うん!ありがとう、大事に着るね!」
服を買ってお店を出る。
リヴァイに引かれながら街を歩いていると、本当に色んなお店や人がいるんだなぁと実感する。
地下街ではこんな綺麗な格好をした人はわたしの周りではほとんど見ることがなかった。あらためて、地上はすごい、感じていた。
するとふと、1つのお店に目が止まる。
キラキラとした宝石などが売っているお店。
でもわたしの目を引いたのは、宝石なんかではなくて、綺麗な赤いリボンだった。
なんでもない赤いリボンになぜかわたしはとても惹かれてピタリと足を止めてしまった。
するとリヴァイが振り返る。
「おい。どうした」
ハッとして目線をリヴァイに戻し首を振る。
「ううん!なんでもない!
急に止まってごめんなさい」
そう言うとリヴァイはちらりとどこかに目線をやってから、行くぞ、と言って歩き出した。
****
お買い物を終えて部屋に戻ってきた。
これからこんな綺麗な服を着れると思うと嬉しいし、大事にしなくちゃ、と思う。
そんな様子をリヴァイは何も言わずに見ていたが突然、ナマエ、と名前を呼ばれた。
「ずっと気になっていたが、その長い前髪は邪魔じゃねぇのか」
確かに言われてみれば前髪はすごく長くて目にかかっている。たまに邪魔だなぁと感じることはあったけれど、ずっとこうだったのですっかり忘れていた。
「言われてみるとちょっと邪魔かも...?」
「もしこれから訓練が始まったら余計に邪魔になる。
せめて前髪は切れ」
...確かに。掃除をする時もたまに邪魔と感じていたので切るべきだろう。
「切りたいけど...自分じゃ怖い...」
そう言うとリヴァイはハサミを取り出した。
「.....しょうがねぇ。俺が切ろう」
サク、という音と共にはらはらと長かった前髪は落ちていく。そしてわたしの視界は開けていく。
リヴァイは迷いなくわたしの前髪を切っていくので、じっと終わるのを待っていた。
「...こんなもんだろう」
「ありがとう!」
長かった前髪は目よりも上に切りそろえられた。
なんだか新しい自分になったようで嬉しくなった。
お休みの日も悪くない、と感じた。