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「それで、巨人っていうのは痛覚があるのかないのか...」

「う、うん?」

お昼を食べてから、この状態で何時間が経ったんだろう。ハンジはわたしが巨人について知らないだろうから、と話だして現在に至る。

ハンジの巨人についての話が終わることはなく、ハンジはすごく巨人が好きなんだなぁと思う一方、もうわたしには何を言っているのかわからない。そもそも巨人を見た事がないわたしからしたらわかるわけもない...と思う。

ハンジの部屋にある時計に目をやるともう6時でもうそろそろ戻らないとなぁ...とぼんやりと考える。早くリヴァイのところへ戻りたいけど、せっかくハンジがわたしに向けて話してくれているのに突然無視して帰ることも出来ない...どうしよう。

モブリットはもう諦めたのか部屋にはいなくて、わたしとハンジ2人きりなので余計に戻るのが難しい。

うーん、と頭を悩ませていると突然バン!と大きな音を立てて扉が開かれた。

「おい、ハンジ。
てめぇいつまでナマエを拘束したら気が済む」

「あっ、リヴァイ!」

戻るのが遅いのを見兼ねてかリヴァイが迎えに来てくれたようだった。

「おや?

リヴァイがお迎えに来るほど時間経ってた?」

「もう夕方の6時だ」

その言葉にハンジは時計を確認して本当だ!と声を上げた。

「いやぁ、でもまだまだ話し足りないよ!

ナマエちゃんはちゃんと話を聞いてくれるから話がいがあってついつい話し込んでしまった!

また今度、話聞いてね!ナマエちゃん!」

悪意のない笑顔でそう言われると何も言い返せなくなってしまう。

「う、うん...」

「いや、このクソメガネの長い話はもう聞かなくていい。

戻るぞ、ナマエ」

「ま、待って、リヴァイ!」

スタスタと行ってしまうリヴァイに慌ててついていく。

「また今度ね!ハンジ!」

「ああ、いつでも待っているよ」

手を振るとハンジも手を振り返してくれた。

「きっとナマエちゃんがいなくてつまらなかったんだろうなぁ...」

ハンジがそう言ったなんてわたしは知りもしないけれど。

****

リヴァイの部屋に戻って、素早くシャワーを浴びた。タオルを頭に被ったまま部屋に戻るとリヴァイが早く拭け、と頭に被っていたタオルでわしゃわしゃと髪を拭いてくれる。

「ハンジに変なことされてねぇのか」

しゃがんで同じ目線になったリヴァイと目が合う。リヴァイの目は黒くて、なんだか吸い込まれそうだなぁと感じた。

「何もされてないよ。

ただ、リヴァイに会うまでのこと質問されて、身体測定?っていうのをやったんだ。
それで、やっぱりわたしは巨人と戦うために生まれてきたんだって」

「...そうか」

「あ、あとね!リヴァイが教えてくれた紅茶の入れ方で、今日ハンジとモブリットに紅茶振る舞ったらすっごく褒められたよ!

教えてくれてありがとう!」

「そりゃよかったな」

拭くために使っていたタオルをリヴァイはわたしの頭から移動させて首に掛けた。
そしてぽん、とわたしの頭に手を置いてから立ち上がった。

「嫌な思いはしなかったか」

「うーん...。

思い出すのは辛かったけど、でもね、娼館にいた時にわたしに文字を教えてくれた人が、お母さんだったんじゃないか、ってハンジが教えてくれて、それを知れてすっごく嬉しかったんだ...!

あとね、モブリットがとっても優しくて、でもハンジのあの長い話聞かされたり、ハンジの無茶に付き合ってるモブリットは大変だろうなぁって思ったよ。

だから、全然嫌な思いはしてないよ!」

「...たまにはあいつもまともなことを言うんだな」

普段はまともじゃない、とでも言いたげにリヴァイがそう言ったので少し笑った。

「あ、でもね!

やっぱりわたしはリヴァイといた方が落ち着くから好きだよ」

リヴァイはいつも眉間にシワが寄ってるけど、本当は優しいことを知ってる。ハンジといるのももちろん楽しいけど、やっぱりわたしはリヴァイといた方が楽しい。

リヴァイの目が少しだけ見開かれて、気のせいかもしれないけれど、リヴァイが笑ったような気がした。

でもそれも一瞬でまたいつもの顔に戻っていて。やっぱり、気のせいだったのかな、と首をかしげているとリヴァイはわたしの頭をわしゃわしゃと撫でた。

「もうさっさと寝ろ。

明日は俺もハンジも用がある。エルヴィンの所へ行くといい」

「うん、わかった!

リヴァイ、おやすみなさい」

「ああ」


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