16


「あ、とりあえずナマエちゃんの今の年齢を教えてもらおうかな!」

「13歳だよ」

そう言うとハンジもモブリットも動きが止まる。なんだかそれはリヴァイに聞かれた時に答えた時と似ている気がした。

「ほ、本当に!?私、もっと小さいと思っていたよ...。

モブリットは何歳だと思ってた?」

「わ、私も10歳前後かと...」

リヴァイと同じくらいの歳を言われてやっぱりわたしは小さいんだと思い知らされる。

「それ...リヴァイにも言われた...。13歳にしては小さい、お前と同じ年齢の奴らはもう訓練兵になっている、って...」

「リヴァイそんなこと言ったのか!

まぁ、成長は人それぞれだしね。ナマエちゃんはもしかしたらあっという間にリヴァイの身長を超えるかもしれないしさ!」

大丈夫だよ、とハンジが言ってくれて少し落ち込んだ気持ちも軽くなる。
そしてハンジはさて、と言い目付きが変わったので真面目な話が始まる、と身構える。

「じゃあ、まずは...ナマエちゃんはご両親と過ごした記憶が無いんだよね?

物心ついた頃には娼館にいた」

こくりと頷く。気付いた時にはわたしは娼館にいて、お父さんもお母さんの顔もわからない。

「そうか...。

娼館での暮らしはどうだったのか、覚えている?」

「ずっと、わたし1人だけ牢屋みたいなところに閉じ込められてた...と思う。
同じ歳の子たちもいたと思うけど、わたしだけはずっと牢屋に閉じ込められてて...。

冷たい床と必要最低限の生きるために必要な道具しかなかった。

決まった時間になったら食べ物が運ばれてきて...それを食べる。それ以外することはなくて、...出しても貰えなかった。

でも、わたしが...5歳になったくらいから黒い髪の女の人がわたしの牢屋を出入りしてくれるようになったの」

そう言うとメモを取っていたモブリットもハンジも目を丸くした。

「黒髪の女の人が、出入りするようになったのかい?

ナマエちゃんのところに?」

「.....うん。

すっごく綺麗な人で、きっと娼館で働かされていたんだと思う...。

その人は、部屋に何も無かったわたしに本をくれて...、あと、文字も教えてくれた。
あの人のおかげで、わたしは今文字が読めるんだ。

でも、その人の名前は最後まで教えてもらえなかった...。その人、わたしが9歳になった時にもう来なくなってしまったから...」

わたしの発言にハンジは口元に手を当てどこか遠くを見つめていた。もしかすると、とハンジは言う。

「...これは話を聞いた限りの、あくまで仮説だけど、その女の人ってナマエちゃんのお母さんだったんじゃないかな。

私はね、ナマエちゃんを連れ去る時にご両親は殺されたと聞いたんだ。だけど、お母さんが東洋人ならナマエちゃんと一緒に連れていかれてもおかしくないと思うんだ。

黒髪の女性、ってところも引っかかるしね。
その人はもしかしたらナマエちゃんが9歳になる時に亡くなってしまったのかもしれないけれどね」

お母さん、そんなこと考えたこともなかった。本当のことはわからない、けれどそう考えると確かに納得した。そして、普通の人ならどうでもいいこんな子供になんか知識を与えたりしない。文字を教えるなんて、本来娼館で働く人間としてはいらないのだから。

胸がじんわりと暖かくなり。目に涙が滲んで周りがかすむ。

だめだ、今は泣いてる時じゃない。目を擦って涙を拭く。

「.....そう、かもしれない。

今でも覚えてるけど、その人ね、わたしにどんな手を使ってでもここを早く出て自由になるんだよ、って言ってくれたの。

そっか、お母さんかぁ...。ハンジに話してよかった!」

わたしが笑うとハンジもつられてどこか悲しそうに微笑んだ。

「.....じゃあ、質問に戻るね。

ナマエちゃんが、娼館を抜けだたした日、初めてナマエちゃんが人を殺した日のことを聞かせて欲しい。

初めての仕事の日、だったそうだね。その時、首を絞めて殺した、と聞いたけど首を絞めて息をとめたってことでいいのかな?」

ドクン、と心臓が大きく音を立てた。初めて人を殺した日。世界は残酷だと知った日。

その日のことを聞かれるとは思っていなかった。

「...違うの」

そう言うとハンジもモブリットもえ、と短く声を出した。

「わたし、首を、折ったの。

体は熱いのに、頭はすごく冷たくて冷静で、指先も凍ってしまったみたいに冷たくて...。

腕におかしいくらいに力が入っていって、変な音が鳴って気が付いたの。その人が、...死んじゃったって」

ハンジとモブリットが顔を見合わせているのがわかる。2人はとても驚いた顔をしていて、モブリットがまさか...と言っていた。

「そんな細い腕に大人の、しかも男の首の骨を折る力なんて到底あるように見えない...。

リヴァイと会った日も、同じような感覚だった?」

「う、うーん...。

あの日は...エマとクラウスが殺されていたのを見た時、同じように体が熱くなって...。

男の人たちを殺してしまった時はすごく冷静だった。動きがゆっくりに見えて...力の使い方?って言うのかな...それが自然とわかった。

でもリヴァイが来た頃にはわたしはもう冷静じゃなくって、あんまり覚えてない...かな」

わたしの言ったことにハンジもよくわかっていないようだった。

「辛いことを思い出させてしまってごめんね。

答えてくれてありがとう。ナマエちゃんの力について、まだまだわからないことはたくさんある。
言葉だけじゃ、得られないこともあるから、申し訳ないが今度はナマエちゃんのその謎の力について調べさせて欲しい」

「も、もちろん大丈夫だよ」

ありがとう、とハンジはわたしの頭を撫でた。


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