15
「ん...ぅ」
明るさが閉じた瞼に刺さる。重たい瞼を開くと窓からは日差しが差し込んでいた。
「へ.....はっ!
ね、寝すぎた.....!」
太陽はもう少しで空の真上へと行こうとしている。確実に寝過ぎた。
急いでベッドから起き上がりお仕事をしているであろうリヴァイの元へ向かう。
「随分と遅せぇ目覚めだな」
「お、おはよう、寝過ぎちゃった...。
あ、あと、その、これ...上着ありがとう」
リヴァイはいつもの場所で紅茶を片手にもうお仕事をしていて。やってしまった、と思った。
けれど寝坊したことをリヴァイは咎めることは無かった。
「よく眠れたか」
自分としては思わぬ方向からの質問だったのでびっくりする。
「...?
う、うん!おかげさまで...。よく眠れすぎて寝坊しちゃったけど...」
リヴァイから借りた上着をコートハンガーに戻しながらそう言う。
「...そうか。
ハンジが手伝って欲しいことがあると呼んでいた」
「ハンジが?」
「詳しいことは知らねぇがな」
内容はどうあれ、なにか仕事を与えてもらえるのは大歓迎だ。たぶんハンジはわたしのことを待っている。だったら早く行かなければ。
「わかった!教えてくれてありがとう。
じゃあ、ハンジのところ、行ってくるね」
「おい、待て」
ハンジのところへ行こうと扉に手をかけた時、リヴァイに呼び止められる。そしてリヴァイはこちらへ来い、とでも言いたげに私のことを見ていた。
「どうしたの...?」
リヴァイの元へ行くと、リヴァイはわたしの髪を手ぐしで直してくれる。
「髪の毛ぐらい直せ」
眉間に皺を寄せて言いながらもその手はすごくふわふわと優しくてくすぐったい。
「...ふは、くすぐったい。
ありがとう、リヴァイ」
つい笑ってしまうとピタリとリヴァイの手が止まった。不思議に思ったらまたすぐに動きは再開して、どうやら綺麗に直してくれたらしい。
「あんまりクソメガネの話を真剣に聞くんじゃねぇぞ」
目を見つめられてそう言われたので頷くしか無かった。
****
1人で廊下を歩くのは勝手に抜け出した昨日以来だったけれど、それでもやっぱりリヴァイがそばにいないと不安だった。
ハンジの部屋について、扉の前に立ちノックをする。
すると、ゆっくりと開かれた扉の向こうにいたのはハンジではなく知らない男の人。
ま、間違った...?!
その男の人は目を丸くして私を見下ろす。
「ど、どうしたんだい?」
「あ、あのハンジに呼ばれて...」
「ちょっと、分隊長!女の子が!」
男の人は大きめの声でそう言った。すると中からハンジらしき声が聞こえる。
「わざわざありがとう。入っていいよ」
男の人に言われるまま着いていくと、そこにはハンジのいる机と、その周りにたくさんの本や資料が机の上に山のように積まれていた。
「ナマエちゃん、おはよう!待っていたよ!」
「遅くなってごめんなさい...」
寝坊してしまったことを謝るとハンジは笑う。
「いやいや、気にしてないよ!むしろ、よく眠れたようでよかった!今日はちょっと疲れることをしてもらわなきゃいけないからね」
「つかれること?」
ハンジは目をキラキラさせながらわたしの手を握る。
「そう!今日はナマエちゃんの能力を調べたいと思っている!」
「の、のうりょく...」
「ああ!君の能力を私達はまだ知らない。恐らくナマエちゃん自身もそれは知らないと思うけれど。それは未知数で不確定要素が多くてね。
少しでもナマエちゃんについて知っておきたいし、今後役に立つことは間違いないだろう。
ナマエちゃん、協力してもらってもいいかな?」
確かにわたしはこうしてここに必要とされて連れてこられたけれど、どうして自分なのか、自分にはどんな特別な何かがあるのか知らない。
それはきっとわたし自身も知らなくちゃいけないことだ。
「...うん。
私のできる範囲内なら全然いいよ」
そう言うとハンジは優しく笑って頭を撫でる。
「ありがとう、ナマエちゃん。
じゃあ、まずは嫌なことも思い出させてしまうかもしれないが幾つか質問をさせてもらうよ。
モブリット、メモを取ってくれ」
「了解です」
ノックした時に迎えてくれた男の人はどうやらモブリット、というらしい。モブリットとハンジは私に向かい合うように座る。
そしてわたしへの質問が始まった。