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「え」
「まだ汚れが残っていると言っただろうが」
ハンジが掃除について気にかけていたことをようやく今理解した。
掃除は嫌いじゃないしむしろ好きだし、綺麗好きな方...だと思ってた。
「もう一度この棚の上をやり直せ」
「わ、わかった...」
気付かなかった...。確かに思い出してみるとリヴァイの部屋はいつも綺麗だった。ホコリを叩いて雑巾がけをする。ひたすらその繰り返し。それが終われば床を箒ではいて雑巾で磨く。
掃除を始めた時は東にあった太陽が気が付けば空の真上に登っていることに窓を磨いている時に気付いた。
ひと通り掃除が終わった、と思う。...リヴァイがどう思うかはわからないけれど。
「終わったか」
「たぶん.....」
リヴァイはリヴァイで一緒に部屋の掃除をしていたけれど、彼が掃除している所はわたしとは比べられないくらい綺麗だった。
わたしが掃除をしたところをひと通り確認する。
「.....まぁいいだろう。
休憩にするぞ。ナマエ、紅茶は入れられるか」
どうやら大丈夫だったらしく安心する。またやり直しと言われるのではないかと内心ドキドキしていた。
紅茶を入れられるのか聞かれたけれど、紅茶なんて向こうでは高くて飲んだことがない。
「...入れられない」
どうにかしてでも入れろ、と言われるかと思ったけれどそうではなく着いてこいと言われ、着いていくとリヴァイはカップを2つと紅茶の茶葉を取り出した。
「紅茶ぐらい入れられるようになれ」
それからリヴァイは紅茶の入れ方を丁寧に教えてくれた。どの温度くらいで入れると美味しいとか、何分くらい茶葉を入れていればいいとか、今後私の為になるようにきっちり教えてくれる。
そうして入れたお茶をリヴァイはいつも作業している机に運んで、いつもの椅子に座った。
わたしはどこに座るか迷ったけれど、リヴァイと向き合う形で座っていいかと聞くと許してもらえたので向かい合って座ってみた。
リヴァイが入れてくれた紅茶は琥珀色でとってもいい匂いがする。わたしもリヴァイみたいに入れたらこんな風に綺麗な色といい匂いのする紅茶が入れられるのかな。
カップの取っ手を掴んでゆっくり紅茶を飲んだ。
「.....おいし」
資料を眺めながら紅茶を飲んでいたリヴァイが資料を置いてこちらを見る。
「当たり前だろうが」
リヴァイはそう肯定したのに資料には目を戻さないでじっとわたしを見るので耐えられなくなって目を逸らしてしまう。
「リヴァイ、な、なにかわたしの顔についてる...?」
「ナマエ、ずっと気になっていたがお前は今何歳だ。たまに発言と見た目が合致しない時がある。
そうと思えば見た目と変わらないガキみてぇな振る舞いをする時もあって訳がわからねえ」
ガキ、と言われてついムッとしてしまう。リヴァイはわたしのことをよくガキと言うし、よく子供扱いする気がする。
「.....ガキじゃない。13歳だもん」
事実を言ったのにリヴァイは怪訝な顔をした。
「俺は冗談を言えと頼んだわけじゃねぇ。
どう見ても10歳行くか行かねぇかだろうが」
「じょ、冗談じゃないよ!
背はもともと小さいから子供っぽく見えるだけで...」
「事実だとしても小さすぎるだろうが。栄養が足りてないのもあるだろうが、それでも小せぇ。
訓練兵のほとんどはお前と同じ年齢くらいで入団する。そいつらはお前より圧倒的にでかい」
そ、そんなことがあるのだろうか。確かにエマと同い年なはずだったが身長は気付けばあっという間に差をつけられていた。
「こ、これから大きくなるし.....」
「は、どうだかな」
リヴァイは鼻で笑うとまた視線を資料に戻した。
絶対、おっきくなるもん...!