8
まただ。また、わたしは同じ場所にいる。
「ナマエ。1人だけ幸せになれるなんて思うな。それはあたし達が許さない」
「や、やめて!ど、うしてそんなこと...」
「どうして、だって?ナマエは約束を破ったからだよ。3人で地上へ行く約束をしたのに、ナマエ1人だけ助かろうなんて許されることじゃない」
クラウスとエマはわたしに近付く。気が付けばエマはわたしの首に手を掛けていた。
そこで夢は終わると思っていた。けれど、終わることはなくて、エマは力を徐々に込めていく。
「くぁ...っ、く、くるし、よ...エ、マ.....っ」
こんなに近くにいるのにエマもクラウスの顔も見えない。
「や、...めて...っ!!」
ガバッと起き上がると、ズキズキと治りきっていない体は悲鳴を上げた。
「.....あ、さ」
窓に目をやると光が差し込んでいた。思わず眩しくて目を細める。地上の世界はこんなにも明るいんだ。
けれど後味の悪い夢のせいでこの明るさを素直に喜べない。
そういえばリヴァイが見当たらない。昨日座っていた場所に目を向けてもいないので、周りを見渡すもリヴァイを見つけられない。
「.....どこに...」
「起きたのか」
ぽつりと呟いた直後に声をかけられ体がビクリと跳ねた。声のした方を見ると扉にリヴァイが立っていた。
「...何ビビってやがる。
やはりエルヴィンから声がかかった。立てるか」
「う、うん」
ゆっくりとソファから体を起こし床に足を下ろして、近くに置いてあった靴を履いて立つ。昨日よりも痛みは治まっている気がした。そして扉近くに立っているリヴァイの元へと歩く。
立っているリヴァイの目の前に行き、わたしより背の大きいリヴァイの顔を見上げると驚いたような顔をしていた。
「...もう歩けるのか」
「まだ、ちょっと痛いけど...。でもだいじょうぶ」
「そうか。ここから少し歩く。行くぞ」
初めて部屋から出て建物の中を歩く。思った以上に建物は広いようだった。リヴァイは私の方を振り返ることはないけれど、わたしの歩幅と歩く速度に合わせて前を歩いてくれているような気がした。
しばらく歩いて、あるひとつの扉の前でリヴァイは止まった。
「ここだ」
リヴァイは扉をノックした。
「エルヴィン、俺だ」
「あぁ、待っていたよ」
その声を合図にリヴァイは扉を開いて中に入ったのでわたしもリヴァイについて行った。
部屋に入ると、恐らくリヴァイがエルヴィンと呼んでいたその人がいた。エルヴィンはわたしを見て少し微笑む。
「ナマエ、目が覚めてよかった。私はエルヴィン・スミスだ。よろしく。
早速で申し訳ないが、これから君がどうするか、について話そう」