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会議が終わり、調査兵団であるエルヴィンとハンジ、リヴァイとわたし、そして三兵団のトップであるザックレー総統は別室へと移動した。
しばらくもしないでピクシスが部屋へと入り、口を開いた。
「して...、瓶の中身は解明できそうかの?」
わたしたちは小さな机を囲み立っていた。小さな机の上にあり、わたしたちの視線の先にあるのはケニーから渡された脊髄液。
ハンジはこれが何なのか、詳しく調べてくれていたのだ。
「それがどうも.....、我々の技術ではこれ以上探ることはできないようです。
エレンとヒストリアとナマエちゃんから聞いたように人間の脊髄液由来の成分ではあるようなのです。それだけではないようですが...。
この液体は空気に触れるとたちまち気化してしまいます。分析は困難です。
やはり我々とは比較にならないほど高度な代物です。レイス家が作ったのだとしたら一体どうやって...」
ハンジの言葉が終わったそれきり、わたしたちの視線は脊髄液に注がれたまま場は静まり返った。
少し経ちピクシスが発言する。
「...ならば、下手に扱うよりも当初の目的に使用する他なかろう」
「すると誰に委ねる?
エルヴィン.....君か?」
総統はエルヴィンへと視線を向けてそう尋ねた。
「いえ...。私は兵士としては手負いの身です。
この箱は.......
最も生存確率の高い優れた兵士に委ねるべきかと。リヴァイ、引き受けてくれるか?」
エルヴィンはそう言いリヴァイへと目を向ける。確かにこれは、リヴァイが引き受けるべき物なのかもしれない。ケニーから渡されたのもリヴァイだ。それに、リヴァイはエルヴィンが言うように生存確率も高いし、現場の指揮もこなせる。
「...任務なら命令すればいい。なぜそんなことを聞く?」
「.....これを使用する際はどんな状況下かわからない。つまりは現場の判断も含めて君に託すことになりそうだ。
状況によっては誰に使用するべきか、君が決めることになる。
任せてもいいか?」
「お前の夢ってのが叶ったら...、その後はどうする」
リヴァイの質問にエルヴィンはリヴァイに向けていた視線を下へとずらしながら言葉を紡いだ。
「...それは、わからない。
叶えてみないことにはな」
「そうか、わかった。了解だ」
リヴァイは二言返事で脊髄液の入ったケースをパタンと閉じて、手に取った。
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兵団不足に陥っていたわたしたち調査兵団は、他の兵団に募集をかけた。
最近の調査兵団の働きぶりやその評判のかいあってか、十分と言っていいほどに他の兵団から調査兵団へと流れてくる者はおり調査兵団にはかつてない活気に満ちていた。
ここまで調査兵団に他の兵団から流れてくる者が多かったのは、恐らく王政をひっくり返したことによる評判に興じて調査兵になった者も少なくないだろう。
そして新兵器の開発も進んでいた。その新兵器はかつて人の力だけでしか倒すことのできなかった巨人に対して、人の力の何倍もの威力で絶命させられる兵器だ。
調査兵団に良い風が吹きはじめていたようなそんな中、洞窟でエレンがヒストリアに触れた時に思い出した記憶の中にいた人物。
エレンの父が会っていた男が誰なのか。彼は必ず何かを知っている。その人が、エレンによればキース教官であるとわたしたちに告げられたのは、会議の次の日だった。