嘘世界・3





レグヌムは賑わっていた。
人々は戦争が終わった事への喜びを味わっている。
友人だったり、恋人だったり、家族だったり……。
笑顔の人々を見て、当然だが「平和だな」と思った。

「この旅も、終わりね」
「なんだか、不思議だな。なんとなく、ずっと旅が続くと思ってた。みんなと一緒に、ずっと……」

確かに、ルカの言う通りだ。
出会ったのは最近で、私は前世で彼らと特別親しかった訳でもないのに……まるで家族みたいに、これからもずっと一緒に在るものだと錯覚してしまう。
何というか……みんなのいない生活というのが想像できないくらいに、みんなと一緒にいたいというか……。

「旅など、いつでもできるさ。そしていくつもの旅が重なって、いつかそれが人生となるのだ。ルカ、これはお前にとってたったひとつの旅の終わりにしかすぎん」
「……そうだね。旅の終わりを惜しんでちゃ、次の旅は楽しめないもんね」
「カッコいい事を言いますね、二人して」

リカルドさんとルカに笑いかけて、私はふと違和感に気付いた。
人数が、足りない。

「……あれ?コンウェイと、キュキュは?」

二人の姿がどこにも見えなかった。

「ん……ああ、あいつら、いつの間にかいなくなっちまった。別れの挨拶もなしでよ」
「そう、ちゃんとお礼、言いたかったのにな……」
「お礼を言いたいというよりは、私はコンウェイを問い詰めたい気分ですけどね」

もちろんお礼も言うが……彼の言う「魂の救済」の真の意味を知りたい。
まあ、いなくなってしまった今となっては、どうしようもないが。

「……で、みんなこれからどうすんの?」

イリアが私達に訊いた。
当然の疑問でも、興味でもあった。

「俺はグリゴリの連中が気がかりでな。ガードル亡き後、指導者不在で混乱している事だろう。俺が、あいつらを導いてやりたい。今よりも、より良い道へ……まあ、そんなところだな」
「そりゃ、また大変そうだな。望んで貧乏クジ引いてねェ?リカルドのおっさんよ」
「ガキには分からんさ……亡き者の志を継ぐ喜びはな。では、世話になったな、みんな」

そのまま立ち去ってしまいそうだったリカルドさんの前に、アンジュが立った。
そういえば、リカルドさんはアンジュに雇われていたんだっけと思い出す。

「リカルドさん。あなたを雇って、本当に良かった。心の底からそう思っています」

リカルドさんはただ頷いて、私達に背を向けた。

「バイバイ、リカルドのおっちゃん。また遊びに来たってなぁ」
「……リカルドさん!ノルナゲストにも……母さんのお墓参りくらいには来て下さいッ!」

彼は振り返らなかった。
でも、手だけは振ってくれて……それがなんともリカルドさんらしかった。

「えーっと、エルは?」
「そやなぁ。とりあえず、ウチが面倒見てた子らの様子を見に行かなあかんね。これからがっつりウチが稼いであの子らガッコに行かして、自分で稼げるようにしたらんと!」
「……じゃあ、いいアイデアがあるわ!あたしが学校建てたら子供たちみんな入学させてあげる!無料で!」
「そら、ええ話やなぁ。そんときはお願いするわ」

どこか大人びていてもやはり子供らしい笑顔をエルは浮かべた。
そして彼女は真っ直ぐにルカを見つめた。
子供を心配する顔そのもので、エルの言葉もルカの身を心配するものだった。
ルカは笑いながらエルの言葉を受けている。

「リトス姉ちゃんも、頑張りや」
「……えっ、私、も?」
「あんなどぎつい変態と暮らすんやろ?参ったらすぐ逃げてええんやからな?」
「……大丈夫よ、心配しないで……」

ハスタと共に暮らす……そんな現実を改めて突きつけられると色々と決意が揺らぐ気がして、あまり深くは考えないようにした。

「また会おうや!ほな!」

エルは笑顔のまま手を振って、この場を去っていった。
姿が見えなくなったところで、私は振り返していた手を止める。




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