嘘世界・1





創世力は美しく輝いていた。
私がかつて愛した魔槍の色と似ていたが、それとはまた違った美しさを纏った光で……私は見とれた。
光を差した宝石のように輝くそれは、間違いなく始祖の巨人が残したものだ。

「それで、ルカ……お前は、その力をどうするつもりだ?」
「欲しがる人に高値で売りつけるんもええんちゃう?」
「えーっと、エル?冗談でも、そういうことは……」
「ウソや〜ん、アンジュ姉ちゃん。もう、そんな怖い声出さんといてやぁ。おしっこちびりそうなったわ」

真に愛する2人が使用する事でどんな願いも叶える事ができる創世力……使い方を誤れば、再び世界は混沌に包まれるかもしれない。今以上に不幸が廻る世界になるかもしれない。
私にはもう未来が視えないから、先がどうなるかなんて分からない。
でもまあ……今ならどんな未来でも受け入れられる。

「封印でもするか?そういうのもアリだと思うぜ」
「ううん。もう決めてあるんだ。創世力の使い道」

それに……ルカが使うのなら大丈夫だろうと思った。
何の裏付けも根拠もない、ただの勘だけど。

「世界を、アスラが望んだ世界に。天も地もなく、全てひとつの世界に。きっとそれが、始祖の巨人も望んだ世界だから……だから、今度こそ……」

真っ直ぐな彼の瞳は、イリアへと向けられる。
ルカは彼女に手を差し伸べた。

「さあ、イリア……」

イリアはただ頷いて、彼の隣へと歩み出す。
ルカとイリアの背中を見つめていると、ハスタがふいに耳打ちをしてきた。

「ここで……こいつら全員皆殺しにしたら、どうなるのかな?」

遊びに誘う子供のようにあどけない口調で、その言葉に私は苦笑する。
まず「皆殺し」と言ったって、どうするのだろう。
天術は使えないし、武器もない。
もちろん本気で言っている訳ではないのだろうが、どうにも冗談に聞こえなくて、だからこそ、不気味だ。

「……それは、バッドエンドね」
「だろ?そうでもしなきゃ物語は盛り上がらない」
「でも、そういうバッドエンドはありきたりでつまらない」
「……あ〜、やめたやめた。もう何もカニもつまらない」
「……カニ?」

また訳の分からない事を……。

「……」

しかし、これからの世界は彼の言う通りつまらない世界になるのだろう。

ありきたりな物語のように「めでたしめでたし」で終わって……ずっと、平和なんだろう。
それが、幸福が廻る世界なのだと思う。

「……それもいい」

ずっと求め続けた安息が、もうすぐそこにあるのだから。

「天地を、ひとつに!」
「そして……全てのものに祝福を!」

ルカとイリアの声が響き渡って……創世力が発動した。

淡くも強い光が、私達を……世界を包み込んだ。



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