短い話・ダンガンロンパ | ナノ

『愛』をしたい




部屋に戻ろうしとた大和田くんの特攻服を、くいっと摘まんだ。

「うわっ、なんだよ流火。幽霊みたいだな」
「拗ねるよ」

そう言うと、大和田くんはケラケラと笑った。

「それは困んな。どうした?」
「あのね、手伝ってほしいの」
「何をだよ?」

私の部屋に向かって引っ張る。
引っ張りながら、彼の質問に答えてあげた。

「遺書書くの」

大和田くんが絶句するのがわかった。
そりゃそうだ。
でもとりあえず……遺書を書くのを、手伝ってほしいと私は言い続けた。
そして私の部屋に入ると、直後私の脳天に激痛が走った。
ぽかっなんて可愛らしい音じゃない。
すべてに濁音がついたような音。

「てっ……めぇは、ふざけてんのか!!こんな状況でッ!!」
「……こ、こんな状況だからだよ。だからこそ書きたいの」

モノクマなんていうよくわからないロボットのおかげで始まってしまったコロシアイ学園生活。
誰もが疑心暗鬼になっている。いつ死ぬか、分かったもんじゃない。

だから後悔のないように。
今のうちに。

「いたた……殴ることないじゃない。言い方変えればラブレターだよ」
「どうやったら遺書がラブレターになんだよっ!?」
「おにぃが言ってたよ!結婚は人生の墓場だって!だったら告白やプロポーズって死にに行くものなんじゃないのっ?」
「…………普通にラブレターって言え!まぎらわしい!」

今度は額をぺちんっと叩かれた。
……地味に痛い。

「もしかして、リアルな死の意味での、遺書だって思った?」
「普通はそう考えんだろうが。あー……寿命縮んだー……」
「あははっ、じゃあ君も書きなよ、遺書」

テーブルの上には、色とりどりの便箋が広げられている。

「……って、ラブレター?誰に書くんだよ」
「え?好きな人」
「……だろうな」

俺が聞きたいのはそういうことじゃねぇんだよ。
って顔してる。
呆れてる顔だ。

「ねぇ、何て書いてほしいっ?」
「いや、何で俺に聞くんだよ……」
「手伝ってくれるんでしょ?君が言われたいこと書いてあげる。だからほら、言いなよ」
「言いなよじゃなくて、そんなの流火が自分で……」
「君に書いてあげるラブレターなんだから、君が考えてよ!」
「それなんか違くねぇか!?俺の知ってるラブレターと違…………って、さらっと今すごいこと言ったな!?」
「え?言った?」

変なことは言ってない。
なのに大和田くんはどんどん顔を赤くしていく。

「……私、別に面と向かって好きって言ってないよ。ラブレター渡したらするんだもん」
「お前、サプライズとか苦手だろ?」
「知ってるくせにー。私、ドッキリとか好きじゃないもん」

だってドッキリってさ、相手が喜ぶかわからないじゃん。
相手に喜んでもらうのが第一なのに、相手に戸惑われたり迷惑がられたりしたら意味ないでしょ。

「これもある意味ドッキリじゃねーか……」
「私は、絶対、絶対喜んでほしいの。だから、君が言われたい言葉を書いてあげるの」

私は、ペンと便箋を大和田くんに突き出した。

「もしあれだったら、君が自分で書いて」
「そっちの方があれだわ!!」
「……確かに、ちょっと寒いね」
「ちょっと?ちょっとか?!」
「かなり、かな」

それから二時間。
ようやく完成。

「これさ、楽しいね。自分の性癖とかバレる」
「何が楽しいんだよ……ただの罰ゲームじゃねぇか」
「君にとってはね」

便箋に並べられた言葉は、なんだかくすぐったいものばかりだ。
大和田くんらしくない。

「これ、恥ずかしいなぁ」
「流火、黙れよ」
「だって、」
「だーまーれっ」

中でも一番目を引くのは、『愛』って言葉。
ところどころにいる。

実に君らしくない。

でも、嬉しい言葉。

私は『恋』より『愛』が好きだ。
重い感じがして。
想われてるんだって感じがする。

「じゃあ、ここから出たら渡すからね」
「出たらかよ!?」
「うん。この学園から出たら、私君と結婚するの」
「そういうことを今言うんじゃねぇ!!」

……だって、もし死んだらって思ったら怖いから。
その時のための、保険だよ。
こういう発言しておけば、死んでしまっても、「あぁあんなこと言うから」ってなるでしょ?
え?ならない?……まぁいいや。

「なぁ流火?ちょっとくらい……聞いても、」
「とにかく全部出たら!」
「……な、なぁ、でも何で俺が好き―――」
「そういうのも全部出たら!」
「……そうか……」
「そう!だから、」

だから、早くここから出ようね……。



『愛』をしたい
(『恋』+『愛』で『恋愛』)
(じゃあ、『愛』だけなら?)
(それだけは欲張りですか?)
(でも、『恋』は軽いんです)


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