緋の希望絵画 | ナノ

▽ どこでも転べる足・2




「その殺人を行おうとした人物が再び殺人を行う可能性がないと言い切れるか?」
「さっすが十神クン!やっぱりそうでないと楽しくないよね!」

モノクマが無垢で邪悪な笑いを浮かべている。

「殺人を行おうとしたのはね―――舞園さやかさんなのです!」

今度こそ、完全に全て凍りついた。
冷たい、空気。
体育館特有の寒さではないことは、明白。
重たくて、冷たくて、暗底の空気。

「うっ……ウソだ……」

苗木くんが呟いた。

「舞園さん、ウソだよね?」
「……」

縋るような苗木くんの思いを、さやかちゃんは。

突き落とす。

「本当、です。ごめんなさい……」

苦痛に歪んださやかちゃんの表情。
見ていられなかった。

「舞園さやかさんはね、苗木クンを利用して苗木クンの部屋で桑田クンを殺そうとしたのです!」

楽しそうなモノクマの顔は一転、ショボーンとした暗い顔になる。

「だけど、いち早く舞園さんの殺人衝動に気付いた戸叶さんは邪魔なことに、止めてしまったのです。殺人を。ガッカリだよね、せっかく“本番”まであと少しだったのにね……。戸叶さんは自分がイカれた人みたいにまでして舞園さんを庇おうとしたらしいけど、そんなイイハナシダナーみたいな展開にはならないよ!だってこれは、そんな甘い問題じゃないんだから!残念だったね!残念だね、戸叶さん!」

私は下唇を噛む。
今すぐに泣きたい。
大声で泣いて……それでもう、何もかもがうやむやになるくらいの……。

「は……何がアイドルよ……自分勝手な女じゃない……!」
「ちょっと腐川ちゃん!舞園ちゃんの話をちゃんと聞こうよ!理由があったんだよね?そうだよね?」
「舞園……聞かせてもらえぬか?」

みんなの心が揺れている。
鮮やかな虹色には、黒一滴落とせば、それで十分なように。
ぐちゃぐちゃにみんなの心は雑ざる。

「―――いいえ。その前に聞く事があるわ」

しかし、霧切さんの凛とした声が私たちの揺らぎを止めた。
霧切さんの心だけが、唯一……何もなっていない。
まるで無色透明。何にも動じていない。

「ねぇ、“本番”って、なんの事?」
「それより舞園さんを責める方が先じゃない?」
「……いいえ。あなたの言葉の意味を聞くのが先よ」
「ちぇっ。つまんないのー」

しかし霧切さんの尋ねた“本番”というのもモノクマには重要な意味を持っているのか、クマは答えた。

「ではここで……!!殺人が起きた際に適応される『卒業』のルールについて追加いたしましょう!」
「……ルールの追加?仲間の誰かを殺せば出られるのではないのですか?」
「甘い!甘すぎる!人を殺しただけで簡単出られると?そんなわけないじゃーん!『誰かを殺した生徒だけがここから出られる』……その際に、守ってもらわなければならない“約束”がありましたよねぇ……?」

……それって、もしかして6番目の校則?

『仲間の誰かを殺したクロは“卒業”となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません』

……後半の意味がよく分からないでいた、校則。

「ただ殺すだけじゃダメなの。他の生徒に自分が殺人を起こしたことを知られてないか、それがクリアできているか判定するためのシステム……『学級裁判』を行います!」
「……学級、裁判……?」

モノクマはゲームの説明をするかのように『学級裁判』とやらのルールを話し始めた。

「『学級裁判』は、殺人が起きて、死体が発見された数時間後に開催されます!学級裁判の場では、殺人を犯したクロとその他の生徒であるシロとの対決が行われるのです!

学級裁判では、『身内に潜んだクロは誰か?』をオマエラに議論してもらいます!その結果は、学級裁判の最後に行われる投票により決定されます。

そこでオマエラが導きだした答えが正解だった場合は、秩序を乱したクロだけが『おしおき』となるので、他のメンバーは共同生活を続けてください。
ただし……もし間違った人物をクロとした場合は、罪を逃れたクロだけが生き残り、残ったシロの全員が『おしおき』されてしまいます。
もちろんその場合は、共同生活は強制終了となります!

以上、これが『学級裁判』のルールなのです!」

私は吐き気を覚えた。
嫌悪感と、軽い頭痛がする。

「あの……ところで、さっきから連呼してる『おしおき』……って?」
「ああ、簡単に言うと……“処刑”ってところかな!」
「しょ……処刑……!?処刑って……何……!?」
「処刑は処刑だよ。ショ・ケ・イ!電気イスでビリビリ!毒ガスでモクモク!ハリケーンで体が―――」

私は耳を塞いだ。
これ以上、嫌な気分になりたくない。

ただでさえ、さやかちゃんの事があるのに……。

仮に殺人が起こったら、私たち自身も死ぬかもしれないとか……。


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