▽ 箱庭の少女・3
……という話を、大和田くんに話した。
大和田くんは退屈そうな顔をして私を見ていた。
少しくらい関心を持ってくれていいと思うのに。
「私さ、ちょっと思ったんだよね」
「何をだ?」
「……母さんが描いていた未完成の絵本さ、この学園と似てるなぁって」
永遠の幸せが手に入る希望の国と。
将来を約束される希望の学園。
母さんは希望ヶ峰学園のことを思ってあの絵本を描いたんじゃないかって、思ってしまった。
まぁ、今の状態では、この学園は希望の学園とは言えないけれど。コロシアイ学園生活、らしいし。
「……そんだけ?」
「うん、そんだけ」
「うわ、くだらねぇな」
「あっ、ひどい!私なりに真剣に考えてたのに!」
「じゃあ聞くけどよ、似てるとしたらどうだ?何か問題でもあるか?」
「……いや。ナイ、です」
「ほれみろ」
だけど、ちょっと昔のことを思い出して。絵本のことを思い出して。
気になっただけなんだ。
あの絵本と、この学園では、あまりに酷似しているから。
何か、関係、あるかな、とか……。
「んー、モヤッとするー」
「どーせ寝ちまったら忘れるようなことだろ、んなの」
「……かなぁ?」
「そーだよ」
寝て、起きて、忘れてしまったら、それだけのことだもんね。
……たぶん、忘れちゃうかも。
なんとなーく思い出したことだったから。
『キーン、コーン……カーン、コーン』
『えー、校内放送でーす。午後10時になりました。ただいまより夜時間となります。間もなく食堂はドアをロックしますので、立ち入り禁止となります。……ではではいい夢を。おやすみなさい……』
……今日の終わりを告げる放送。
はぁ……脱出口も犯人の手がかりもなく、今日もおしまい。
「んじゃ、また明日だな」
「うん……おやすみー……」
あっという間に一日は終わる。
私は私のことを考えながら、部屋に戻る。
ベッドに飛び込んで、いろいろ思うことはあったはずなのに、私はすぐに意識を手放した。
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