緋の希望絵画 | ナノ

▽ 箱庭の少女・1




私には母の記憶がない。父の記憶がない。
両親の記憶が、ない。

私の両親は私が6つの時に火事で死んだ。

私もその火事に居合わせたが、どういう訳か、助かった。

しかしその出来事は私の心に大きな傷を残したらしく、私は精神的に脆くなった。

『火は見れない』。
怖い。怖いんだよ。だって死んでしまうから。
『甘いのは嫌い』。
焦げた匂いの中に、甘ったるさを感じるから。
『大声は苦手だ』。
両親が死んだあと、みんなみんな大声で叫んでた。

とにかく、火事のことを思い出せば私は取り乱す。
自分でも呆れるくらいに弱い心。

両親の記憶がないのも、医者が言うには火事への恐怖心から拒絶して記憶の箱の、奥の奥に閉まっているからだとか。

大好きだったのに。
大切だったのに。

脆い精神を崩さないように、両親を消してしまった。
私は必死に自分を守っている。
私が私であるために。
戸叶流火である為に。

……なんとも、親不孝な娘である。

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