緋の希望絵画 | ナノ

▽ 遠く渡れず落ちた・5




私は、みんなの色がキレイなことを知っているから。
みんなの色を愛しているから、どうしようもなく守りたくて……。

みんなと一緒にいたいと思った。

「そうですよ!みんなで……ここから脱出するんです!」
「えーっと……この際だから正直に告白すると……オレ、いつかまた舞園ちゃんに命狙われるんじゃないかってビクビクしてました」
「……桑田君。そういうのって、冗談でも言わない方がいいと思います」
「……さーせん」

さやかちゃんも。
桑田くんも。

「みんなで……うん、そうだよねぇ。みんなで一緒に外に出たいよねぇ」
「不二咲くん。出たいではないぞ!出るのだ、必ずな!」

不二咲くんも。
清多夏くんも。

「外に出なければわたくしも流火から100億の絵を描いてもらえませんし……とっとと出たいですわ」
「それだけじゃなくて、セレスティア・ルーデンベルク殿は宇都宮の餃子が食べたいんでしょう?」
「……それが何か?」
「えっ、何!?安広多恵子殿が素直!?」

セレスさんも。
山田くんも。

「あっ……そうだ、さくらちゃん!!そのケガ、大丈夫!?一体誰にやられたの!?」
「あっ……、あーっ!朝日奈っち!そういうのはもういいべ!?みんなで仲良く!なっ!?」
「はいはーい!オーガちんを殴打ちんしたのはあたしでーす!」
「ジェノサイダー!?あんたがさくらちゃんを……!」
「いやいや、だって怖―――くしゅんっ!!……えっ?……ええっ!?」
「ちょっと腐川ッ、ジェノサイダー出してよ!10発くらい殴るんだからッ!!」
「……朝日奈っち、鬼だべ」

朝日奈さんも。
葉隠くんも。
腐川さんと翔さんも。

「……朝日奈よ、我の事は良いのだ。むしろ我は責任取らなければならぬ……」
「だから、そーゆーのいいっつってんだろ。つか、朝日奈じゃねーけど、そのケガ大丈夫なのかよ。保健室行った方がいいんじゃねーのか?」
「そうだな……しかし、大和田こそ大丈夫なのか?」
「ま、プロテインの粉が気管入っただけだしな……」
「……それもそうか」

大神さんも。
大和田くんも。

「……戸叶さん」
「……霧切さん、何?」
「“さっき”の続きよ。私は学園の謎について調べる。だから―――だからあなたは、安心して描きなさい」
「……うんっ!」
「あ……そうだ、疑問なんだけどさ、戸叶さん。そのいつも言ってるその“描く”ってどういう意味?普通の……描くじゃあないんだよね?」
「……描くっていうのは……描くんだよ」
「……そうなんだ」
「……そうなんだよ」

霧切さんも。
苗木くんも。

「……何故だ、」

十神くんも。

みんないろんな色で、綺麗な色だから。
私はみんなを描きたい。
描いていたい。

「……何故、そんなにこのゲームを否定するんだ、貴様らは。こんなスリルのある殺し合いというゲーム……何故自ら命を投げ出そうとしてまで否定する……?」
「あのさ……十神くん。悪いけど、これは、ゲームじゃないんだ。ゲームじゃないから、君の思い通りにはならない」

いつもだったら殴りかからん勢いで言葉の応戦をするが、私は十神くんに笑いかけていた。
今の十神くんは脆いと思ったから。
今だったら、その色を描ける気がした。

「あえてゲームっぽく言うんだとしたら―――ここまで誰も死ななかった、だから君や黒幕の負け……とかじゃないかな」

誰かが死ぬことで進む物語……。
それをゲームとして望む十神くんからしたら、私のこの発言は面白くない。
しかし、反論もできないんだろう。
十神くんは何も言わなかった。
ここまで来ても、誰も死なないのだ。
黒幕にもそろそろ諦めてもらいたい。

「ねぇ、十神くん。もうゲームなんかやめない?」
「……くだらん。俺は貴様らなんかに―――才能を植え付けられただけの貴様なんかに絆されん」

私は目を細める。
それについて、私は反論なんかしない。
真実だから、出来ないし。

「……十神くんらしくて、なんかいいね。でもさ、残念だけど、その才能を植え付けられただけの私なんかに、君は描かれる」

私は、十神くんから始まり1人1人の顔を見渡した。

「全員だ」

1周見渡して、そうして私は笑った。

「私がみんなを描いてあげる」

誰も欠けることがない希望色の絵画。

それが私の、希望だ。

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