緋の希望絵画 | ナノ

▽ 目の前が見えなくて・3




「調べてみたところ、この学園では“ある計画”が進行中だったみたいなんだ。『希望ヶ峰学園に高校生達を隔離し、共同生活を送らせる』……そんな計画がね。しかも、その共同生活も、ただの共同生活じゃなくって……隔離される高校生達は、場合によっては、学園内で一生を過ごさなければならないって……」
「その計画って……」

私たちに課せられた共同生活と、似てるっていうか……同じ?

「とんでもない計画だよね……。しかもね、そんな計画を立てたのは……他でもない“希望ヶ峰学園の事務局”だったらしいんだよ」
「え……?ちょっと待って!じゃあ、私達が閉じ込められてるのって……犯罪組織とか、異常者の仕業じゃなくって、希望ヶ峰学園自体が……仕組んだ事……?」
「んなアホな事あるわけねーじゃん!つ、つか、だとしたら……何の為だよ?」

アルターエゴの話はまだ終わっていない。
憶測で話をするのはやめ、私たちはアルターエゴの言葉の続きを待った。

「でね、そんな計画を立てられた原因は、1年前に起きた“ある事件”にあるらしいんだ。その事件については……こんな風に書いてあったよ……“人類史上最大最悪の絶望的事件”だって……」

“人類史上最大最悪の絶望的事件”……?

「な、なに……その、いかにもな事件の名前……」
「その1年前の人類史上最大最悪の絶望的事件って、かなり悲惨な事件だったみたいだよ。だって、その事件のせいで……希望ヶ峰学園は教育機関としての昨日を失って、閉鎖に追い込まれたらしいんだ」

ええっと……つまり、今から1年前に、人類史上最大最悪の絶望的事件があって、その事件のせいで希望ヶ峰学園は閉鎖に追い込まれた。
そして、希望ヶ峰学園を舞台として持ち上がった計画が……そこに高校生たちを隔離して一生の共同生活を遅らせる―――なんか、現実味のない話。
全て理解できたかといえば、そんなことはなく、意味は分からないままだ。

「ごめん……それ以上の事は分からないんだ。これ以上の情報は、もうここにもないみたいで……役立たずで……ごめんね……」

アルターエゴが申し訳なさそうに言う。
こ、こんな中途半端なところで、放り出されてしまうのか……。

「あ、でもね……!もう1つ大事な事が分かったんだ。とても大事な事……多分……“黒幕”の事だよ」
「黒幕の……!?」

私たちは今まで以上に、ぐっとパソコンを近付いた。
「黒幕の正体がわかったの?」とみんなの疑問を代表して不二咲くんが打ち込んだ。

「……ううん。黒幕の正体までは分からなかった。でもね、手掛かりなら見つけたよ。僕達を隔離する計画を立てた希望ヶ峰学園事務局……その事務局の責任者が……“希望ヶ峰学園長”だったんだ。つまり、全てを仕組んだ黒幕は、その学園長って可能性が高いんだ。ちなみに、その学園長は“30代後半の男性”で……今も“この学園内にいる”可能性が高いみたいだよ……」
「学園長が……この学園の中に……!?」

アルターエゴの話を聞いて、私たちは顔を見合わせた。

「じゃあ、間違いないよ!そいつが黒幕なんだよ!!モノクマも“学園長”って名乗ってたし!」
「となると……ますます、あの学園長室が怪しいな……」
「でも、ドアをぶち破ったら……校則違反だよ?」
「山田君。わたくし達の為に犠牲になってきて下さい」
「また僕の意見は丸無視ですかッ!?というか、さすがにそれは引き受けかねますぞ!!」
「まあ、命、関わっちゃってるもんね……」

もはや現実逃避にも似た会話に発展しそうな勢いの中、私たちはため息をついた。
ただ沈黙が流れる中で……唐突に、彼女が呟いた。

「私が……捜す……」

沈黙だったのを抜きにしても、霧切さんのその声は、何とも表せない力強さを持っていた。

「学園長は……私が必ず捜してみせる……。必ずよ……」
「ど、どうしたんですか……霧切さん……?」
「…………私が、見つけないといけない。そんな気がするの……」

霧切さんがここまで感情を露わにするだなんて……初めて見た。
やけに学園長という言葉にも反応していたけれど……ああ、もう、分かんないや。
アルターエゴの情報も、今ので正真正銘最後だったみたいだし……。

「……お疲れ様、アルターエゴ。また何かあったら、よろしくねぇ……」

不二咲くんは笑顔を努めて、声に出して言った言葉そのままをキーボードで打ち込んだ。
アルターエゴも、カメラから見える私たちの様子が分かってか、どこか気を使いながらスリープモードへと移行した。

「……また、かぁ。データがないパソコンじゃあ……もう何も、出ないかなぁ……」
「データがないなら……増やしちゃえば?データの解析が終わったなら、インターネットに繋ぐことも出来るんじゃない?」
「……インターネット、かぁ……黒幕にバレる危険を孕んでも、やるべきかなぁ?」
「そう、言われちゃうとね……」

確かに迂闊にインターネットに繋ぐのは、はばかれるか……。

「メモリか何かが見つかるだけでも、結構な手掛かりになるかもしれない、けど……」
「そういうのがありそうなのは、情報処理室……かな」

となると、また鍵のかかった部屋になっちゃうんだよね……。
鍵のかかった部屋を壊すのは禁止、だから……って、あれ。
それじゃあ、鍵のかかってる部屋―――。

「ところで……諸君。“人類史上最大最悪の事件”とは、一体なんだ?」

私の思考は、清多夏くんのその言葉によって中断されてしまった。

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