緋の希望絵画 | ナノ

▽ 空白は焼却・3




こんな私がきっと、モノクマから聞いた話やルールに恐怖を覚えて、それでもこうして精神を乱さずに平常心でいられるのは、大和田くんが隣にいるから。
信頼できる人間が側にいるっていう、安心感。
こんな状況だから、なおさら。

「なぁ、こいつ休ませるって言っても、どこにだ?」
「んーとね、やっぱ、食堂がいいかな?集合場所みたいだから」
「食堂ってどこだよ」
「待って」

電子生徒手帳に入っている地図のデータを確認する。 ……教室を抜けた先が、寄宿舎エリアになってるみたいだけど……。

「……部屋が密集」
「は?」
「いやさ、地図。寄宿舎エリアなんだけど、奥に部屋がいっぱい密集してるみたいなの。たぶん、このアイン……私たちひとりひとりの顔、かな……」

ドット絵で表現された私たちの顔。
……微妙に似てるのがイヤだ。

「よし、流火。走って見てこい」
「ええ〜……」
「苗木持っててくれんなら俺が見てくるぞ」
「私が見てきます」
「意外と決断早かったな、オイ……」
「じゃあ走って見てくる」

そして私はダッシュで寄宿舎エリアにやって来た。
校舎側も異質だと思ってたけど……ここもまた、異質な空気が漂う。
食堂やコインランドリーのあるフロアは全体的に白くて、清潔な印象を与えてはくるんだけど……その奥。
部屋が連なるそのフロアは、赤黒いタイルが敷き詰められ、なんだか目に悪い。
というか、何を考えてるんだ。
赤に黒って、不気味な印象しか与えないだろ、そんな色。
美しくない。
は基本的に万能だけど、赤と黒のコラボレーションだけは頂けない。
だって、焦げた黒と、 炎を表すような赤なんて……ああ、赤黒いなんて、 不気味すぎる。
赤は好きだけど、赤黒なんて大嫌いだ。

…………と、話がずれた。

まぁ、その不気味なフロアに足を踏み入れたのだが。
そこには地図の通りに部屋がいっぱいあって、部屋の扉の中央にはプレートがかけられていて、カタカナで名字が書かれていた。

『キリギリ』『ナエギ』『マイゾノ』『フカワ』……。

……あ、あれかな?

「『就寝は寄宿舎エリアに設けられた個室でのみ可能です。他の部屋での就寝は居眠りとみなし、罰します』……」

私たちの、個室。

私は大和田くんの所に駆け足で戻った。
彼は、食堂の前に来ていた。
さすがにずっと抱えているのは厳しかったのか……苗木くん、下ろしちゃっている。

「あの密集してる部屋、個室だったよ」
「個室?」
「うん。校則にもあったやつ」
「つまり……その個室以外で寝たら?」
「ドカーン」
「……とりあえず、苗木を寝かせる場所は見つかったな」
「うん」

私たちは苗木くんを休ませる為に苗木くんの部屋へと 向かう。
苗木くんの部屋には、鍵みたいなものはかかってなかった。
私たちが初めて入ったのだから、それも当然か。
……それにしても。

「ずいぶん殺風景な部屋だな……」
「……うん」

大和田くんでさえそう思ったほど、この部屋には何もない。
最低限の生活ができる感じ、だ。

「苗木くん起きたら、謝ってね?」
「分かったって。睨むな睨むな。確かに俺が悪かったもんな?」

その言葉に、私の顔が緩む。
いい人なんだ……横暴だけど。
でも、それも、彼らしさ。

prev / next

[ back to top ]


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -