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依りて孤独より救済



救済しすぎると、掟破りとされて命を狙われる。
私も掟破りの魔法使いとして刺客を送られる事が多々ある。

現に、今がその状況。

「貴様は……間違っている……」

私の目の前には、息も絶え絶えになっている刺客の男魔法使い。
傷だらけで放っておけばそのまま死んでしまうであろうその男に、私の良心が痛む。思わず救済の手を伸ばそうとして、同行人に止められた。

「とどめ、さそう」

パーシヴァルは幼い声に反して、無慈悲な顔で男を見つめる。
仮に救済しても、この男はまた私と無関係のパーシヴァルの命を狙うだろう。
私は構わないが、パーシヴァルまで危険に晒してはいけないと思った私は、仕方なく生贄を選択することになった。

「……さようなら」

右腕に宿った男魔法使いの魂に、私は目を瞑る。

「せめて、良い夢を見て眠って……」

殺戮衝動を抱えた右腕で良い夢が見られるかは疑問だったが……気休めでもそう言っておかなければ私の心が保たなかった。罪悪感で私が押し潰されそうになる。

一息ついた私は、パーシヴァルにいつものように笑顔を見せた。

「ごめんね!パーシヴァルは関係ないのに毎度毎度巻き込んじゃって!」
「かんけいある。だってみょうじ、なかま、だから」
「おお……カッコいいこと言うね、パーシヴァル……」

思わず笑顔も引きつってしまう。
きっと彼は本気で巻き込まれていないと思っているし、仲間だと思っているのだ。
それでも私は申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
パーシヴァルだって「魔物は生贄にしなければならない」というのを分かっているだろうに。

「ねぇ、パーシヴァルはどうして私に付いてきてくれるの?」
「え?みょうじが、すき、だから……だよ?」
「……おおぅ」

屈託のない笑顔で、平然と言ってのけるパーシヴァル。
深い意味はないのだろうが、直球で言われると何だか恥ずかしい。

「だから、ボクは、みょうじをまもる。みょうじはなにも、わるくない」
「いやいや、魔物を救済するのは悪いことなんだよ、パーシヴァル君?」
「でも、みょうじがまもの、たすける、わるいとはおもわない。だって、むね、いたくない、よ」

胸が痛くならない……。
悪いことだと思わないのは、彼自身も魔物を殺したくないからだろうか。
魔物の生贄と救済に関して彼は中立派であるが、本当はこちら側―――聖の腕の魔法使いなのではないかと思ってしまう。

「みょうじのためなら、たたかえる」
「あ、愛の告白みたいだね……」
「あいの、こくはく?それ、おいしい?」
「……この純情め」

数年後にそういう知識も獲得して恥ずかしくなればいい。
……ああ、でも何故かパーシヴァルは成長しても変わらなそうだな。

「?みょうじ、なんでわらってる?」
「何でもない。さーて、次の魔物でも見つけて救済しますか」
「あっ、みょうじ……!まって……!!」

私のうしろを付いてくるパーシヴァル。
母の後を追いかける子供のようなその姿に、私は苦笑してしまう。
何て緩い存在なんだ、この癒し系。

「いっしょに、いこう」

ねだるように放たれる言葉。
その言葉は初めて出会った時言われたものと同じだ。
だから私も、あの時と同じように返す。

「構わないよ」

パーシヴァルは嬉しそうに笑って、私の右手を手に取った。


依りて孤独より救済
(もっと私にその無垢な笑顔を見せて……)
(そしたら私は、自分が正しいと思えるから……)


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