流浪の子

あれからみんなで親交を深めようと話しかけたものの、シズクちゃんは全く反応を見せなかった。ずっとどこか遠くを見てぼーっとしていて、こちらの存在を認識するのがとても遅い。そして名前を覚えてくれない、覚えようとしない。どうしようシズクちゃん天然を超えた究極の天然だよ。

そして今シズクちゃんを除いた全員で集まって円になって座り、彼女について会議を開いていた。

「くっそー!マジでなんなんだよアイツ!全然反応してくんねーじゃん」

折角オレ達が話しかけてやってんのに、とアビがぼやく。

「まぁまぁしょうがないんじゃないの。きっと此処に来るまでに色々あったんだよ。彼女が歩み寄るのをゆっくり待とう」

「そうね。あまりこちらからグイグイいくのもあれですもの。ねぇエシラ」

「えぇアリス。でもおそらくこっちが待っていても結局何も変わらないんじゃないかしら」

「アリスの言う通りだ。おいシロナ。お前あいつの世話係だろ?なんとかしろよな」

ボーっと聞き流していたら、いきなりこっちに矛先が向いた。

「えっそんなぁ、確かに仲良くなりたいし私が主に一緒に行動するようにって先生に言われたけど、私、アビと違ってシズクちゃんに顔すら覚えてもらってないんだよ。自己紹介だって何回したことか…」

「あぁ、そういえばアビは唯一シズクに顔を覚えられていたわね。ねぇエシラ」

「えぇ、アリス。そりゃこんなトサカ頭一度見たら絶対忘れられないわよ。無駄に目立ってるんだもの」

「んだとごらぁ!」

「アビ、そうやってすぐ挑発に乗るのやめようよ」

双子に煽られてキレるアビをニコルが宥める。この双子とトサカ頭が揃うといつもの倍うるさい。怒鳴るアビとそれを全力で煽る双子。まさに混ぜるな危険という言葉がふさわしい。この3人、ここにいても邪魔でしかない気がするのは私だけだろうか。

「まぁシズクも来たばかりだし、取り敢えずここは様子を見ておくことにしようよ。話すきっかけくらい、この先幾らでもあるだろ」

結局話は上手くまとまらず、ニコルのこの一言で一先ず会議は終了となった。

「もうすぐ夕御飯か。シロナ、シズク読んで来て」

「ちゃんとしろよー。世話係」

「はーい」

返事をすればアビが満足気に部屋を出て行った。ギィと軋んだ音を立てて扉が閉まってからふと気がつく。

あれ?なんか私に全部押し付けてない?