暴れん坊少年

アビがボロボロになって帰ってきた。ニコルに支えてもらってようやく歩けるぐらいの負傷をして帰ってきたのだ。

アビは強い。体格も良いし、元々素養があるのだろう。ここらでは負け無しで、流星街のわんぱくボーイズの憧れの存在である。そんな彼に、私を始め、アリスやエシラも組み手と称してボコボコにされたのは一度や二度ではない。

そんなアビがボロボロになるなんて考えられなかった。一体誰にやられたのだろう。野次馬心が働いて「どうしたの?大丈夫?」と声をかけた。

「…うるせー」

一瞬だけ私と目を合わせた後、すぐに気まずそうに目を逸らし、ボソッと呟いた。おお、アビが弱ってる、あのアビが。

俄然経緯を聞きたくなった私は、今度はニコルに聞いてみた。面白そうな気配を感じたのか、両隣にはいつのまにか双子もいる。

「実はね、───…」

少し疲れの混ざった笑みで教えてくれたニコルによると、中央区まで遊びに行った2人は、些細なこと(拾おうとしたものが同じだった)で別の区の少年と喧嘩になってしまったらしい。
実力は向こうの方が上で、結構な差をつけられてアビが負けてしまったんだとか。負けても尚喰らい付こうとするアビに滅多打ちにしてやろうとする少年。泥試合と化した喧嘩をニコルと、少年と一緒にいた別の少年が体を張って仲裁してようやく終幕したのだと言う。

へー流星街って広いもんだねと双子と話していたら、いきなりアビが会話に割り込んできた。

「おい、俺が負けたあいつは人間じゃねぇ。人の皮被ったアフロのゴリラだ。仕方なかったんだ。俺が弱いとかそういうのじゃないからな!!」

会話を遮られ不機嫌な顔になったアリスは、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた後、わざとらしくため息をついて肩を竦めた。

「…確かにそれはしょうがないわね。ニワトリがゴリラに勝つなんて話、聞いたことないもの…ねぇエシラ?」

「えぇアリス。そのニワトリに歯が立たないのが本当に癪だわ。でも今なら…今なら三人がかりでかかればこのニワトリに引導を渡せるわね。ほらっ押さえてシロナ!!」

「えっ!?」

なぜか頭数に入れられた私は、勢いに乗った双子を止めようにも止められずに結局アビ討伐戦に参加することになった。勿論キレたアビにボロ雑巾のようにされたけど。やっぱりアビは強かった。

数日後、リベンジしに行く!!と息巻いて教会を出たアビが「友達になった。ウボォーギンって名前だとさ」と溌剌とした笑顔で帰ってきた。
おい、リベンジはどうした、リベンジは。