宝物 | ナノ


お誕生日って、ケーキ食べてプレゼント貰ってー、それから、おめでとって言って終わりだと思ってた。けどそれって、普通というなんというか。

「プレゼント、楽しみにしててよ」

彼氏が居るだけでもう何回も過ごしてきてる誕生日がトクベツになる気がする。
愛する愛する幸村君が私のために誕生日の計画を立ててくれてるっていう気持ちだけで私はもう胸がいっぱいで眠れない。ついこのあいだ幸村君のためにお祝いしたのは私だと言うのに。あー幸せ。
当日、部活が終わり次第幸村君のお家でお祝いしてくれるみたいで私はるんるん幸村君の後を付いていく。今日はまだおめでとうって言われてない。

「入って」
「おじゃましまーす」
「いいよ、誰も居ないから」

へっ。二人きりなのですか?
顔に熱が集中して、心臓がばくばく言い出す。うそ、これ、まさか、とブっとぶ前に幸村君にくすくす笑われながら期待してるの?って言われてまああれですよね、もちろん私の顔は更にゆでだこみたいになってしまうのでした。
一度汗を流しにシャワーを浴びに幸村君が出ていったので一人で部屋で待たせてもらうことにした。男の子の部屋じゃないみたい。なにこのフリフリの部屋。だけど余分なものは一切置いてなくて、広く感じる。ベッドにでも座ってなよと言われたけどそれは悪い気がして、ちょこんと床に正座した。ん、落ち着く。

「あれ、どうしたのそんなところに座って」
「あ、こっちのほうが、落ち着いて、」
「そうなんだ」

いつもと普通の幸村君。さっきの期待してるの、って言葉に期待してるの、私だけなのかな?なんて考えてたらすぐ目の前に髪の濡れた幸村君の顔がどあっぷであって、それで、キ、

プルルルルっ

「へぁ、」
「……………電話、鳴ってるよ」

空気読めし。
離れていく幸村君の匂いに寂しさを感じながら電話に出れば、カンカンになったお父さんの怒鳴り声が響いた。
何時だと思ってる!だってさ。何時?

「…あ、」
「あ、じゃないだろう早く帰ってきなさい!」

気付けばとっくに門限の7時を過ぎていた。早いよ。ちらりと幸村君を見ればどうしたの、と言ってにこりと笑うから罪悪感。どうしよどうしよ。

「今どこに居るんだ」
「え、と、友達の家…」
「迎えに行くから場所を教えなさい」

えー。無理なんですけど。ちょっと待っててと一回電話を置いて幸村君に事情を説明した。わわわー怒ってらっしゃ、る?
と恐る恐る幸村君の顔を見れば、にこり、と笑顔で。

「今日は帰ろうか」

怖っ。笑顔なのに目の奥が笑ってない。そりゃそうだ私のために全部全部用意してくれたのに、馬鹿だよね。あーやっちゃったくそ死にたい。
でもね、でもね幸村君。

「帰る準備しなよ。送ってく」
「やっ、やだよ」

帰る気なくした。
私、帰らないよ!
驚いてる幸村君の手をぎゅっと握った。わがままばったかでごめんね?でも年に1度きりの誕生日だから。そしたら、頭の上からため息が聞こえてきて

「明日、二人で謝ろうか」

って。
お父さん、すみません。本当にすみません。お誕生日プレゼントにくれるっていってた5000円いらないから、今日だけ許して。

20110308


麻呂から誕生日プレゼントにいただきました!!危ないイケメン幸村hshs!!
本当にありがとうー!!




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