飲み込む言葉(我愛羅) | ナノ
「きゃー!我愛羅さまステキー!」
「・・・」
「チョーカッコイーファンになりそー!」
「おいやめろ」
「えーなんでですか」
「馬鹿にされている気分だ」
だって暇なんですう、と口を尖らせるコイツはテマリが俺に付けた護衛で、その職務は修行への付き添いにも及ぶらしい。最初は内心自分より弱いヤツに護衛もクソも無いだろうと思っていたがよく考えると自分は風影なのだからこの里に自分より強いヤツはいないのだ。
そして幾人かいる護衛の中でもコイツは一番有能で、それなのにどこか抜けていて、俺の危険にいち早く立ち向かい、「もう大丈夫ですよ」と顔いっぱいで笑うのだ。
「フレー!フレー!我愛羅さまー!」
「お前、もう少し離れてろ」
「え〜そんなに私がうざいですか?暇なんですもん」
「それはさっきも聞いた。それに俺の修行を間近で見ることの何が暇の解消になるんだ」
「えっ、だって」
彼女はふっと首を傾げた。ああ、また、あの笑顔。
「我愛羅さまの身のこなしは里一番ですし、綺麗で見惚れてしまうんですよね。術のスピードも速いし」
「・・・」
「あ、もちろん里外でも一番だと思ってますけど!」
「・・・それならせめて邪魔をするな。あともう少しだけ離れろ」
「えっ私そんなに邪魔でした!?」
だってもしかしたら逸れた攻撃が当たってしまうかもしれない
本当は俺の一言で全てがどうにもなることを知っている。あっちへ行けとか、修行には付いてくるなとか、私生活にまで干渉するなとか。
しかしそれに踏み切れないのはやはり自分が臆病で、それでいてとんでもなく我が儘で、彼女に依存しているからだ。
「我愛羅さまー?」
「・・・昼にするか」
「ええっ我愛羅さまからのまさかのお誘い!?どうしよう明日槍が降って死ぬかな」
「嫌なら来るな」
ああ、言えるわけがない。一秒でも永く傍にいてほしいなんて