絶望的なんだ(ネジ) | ナノ
「これは何本に見える?」
ネジの声がしたので私はスッと右手を伸ばした。すぐにぶつかった手をぎゅっと握る。指がひい、ふう
「三本」
「触って確かめるな。目で見ようとしろと言っているだろう」
「触った方が早いんだもの」
「これが敵だったらどうする」
「その時はその時」
「そんなことはさせない」
見えないんだもの。
ネジが自分の手をほどき、戻してしまう。行き場を失った私の手はそのまま宙をかき、そしてだらりと垂れ下がった。
私の目の前にはネジがいる。分かっているのに私の目が感じるのはぼんやりと光を遮る黒い影だけだ。ネジの真珠のような瞳も、流れるような漆黒の髪も、私の両目は映してくれない。
先月の任務で負傷してからずっとその状態だった。聞いた話を繋ぎ合わせるとどうも私の顔には両目を貫く長い傷痕があるらしかった。相当醜い状態であるはずなのにネジは任務の合間を縫って駆けつけてくれる。愛しい。そして苦しい。
新開発された眼細胞を再生させる医療忍術も施されたが、私の体質が特異なようで、術が合わないのか目に見える効果は表れていない。私に適合する眼球も無い。それでもネジはこうして根気強く私のリハビリに付き合ってくれる。全ては私が元の生活を望んだからだ。知っている。ネジは、ほんとは、
「俺が、」
ネジは絞り出すように言った。声が静かに震えていた。
「俺がお前の分まで世界を見る。何でも話してやるし出来る限り側にいる」
「・・・」
「だから・・・もう復帰は諦めてくれ。リハビリだって無理にしなくていいんだ」
「、」
「もうこれ以上見ていられないっ・・・」
ネジ、泣いているの?
そんなことさえこの両目では分からないんだ