五話 | ナノ



「「「跡部様の補佐ですって!?」」」


生徒会の人事についての放送が終わった直後、佑子と同時に女子のほとんどが立ち上がってこちらに詰め寄ってきた。私はガックリと肩を落とした。

(核心には触れずに)順を追って説明すると、佑子はわざとらしく大きく身をよじらせてこちらにしなだれかかってきた。


「嗚呼、非情なる天の裁き!学級委員・・・学級委員にさえなっていれば今頃跡部様の隣にはこのわたくしが!」


「よく言うよ、毎朝毎朝毎朝毎朝テニス部の朝練観に行ってて遅刻ばっかりだったくせに!遠征から帰って来たら今度は『宿題終わんない!』って泣きついてきて!」


悲劇の女王を気取っていた佑子はうっと声を詰まらせた。


「何よアンタ・・・今日はやけに苛立ってない?もしかして跡部様の補佐が嬉しくないの?」
「誰が嬉しいもんですか!!!」


全く、景吾坊っちゃまはどういうつもりなんだ!ただでさえ人が気を遣って生活しているというのにあの風雲児にかかれば全てが水の泡だ。これから私はしばらく生徒の注目の的になるだろう。あの坊っちゃまの気まぐれに付き合うのも我慢の限界というものだ。


離れた両親に送る通知表だからと思い少しでも内容をよくしようとしてきた努力がこんな厄介事になって返ってくるとは。私はとことん神様に嫌われているみたいだ。


「あのさ、別にあたしたちアンタが適任じゃないって言ってるつもりじゃないんだよ?」


珍しく憤慨する私をどう勘違いしたのか、佑子以下クラスの女子たちは一斉におろおろし始めた。


「ていうかよく考えたらアンタ程の適任もいないんじゃん!?真面目で頭もいいし礼儀正しいし、ミーハーじゃない上に跡部様とは何の関わりもないんだもん!ファンクラブも絶対認めてくれるって!」


『跡部様とは何の関係もない』


実は一番関係があるかもしれないことをこの女子たちは知らない。そしてそのことが私の身の破滅に繋がりかねないことを。


「いいよもう、決まったことだし」


そう言った私の声がよほど冷淡だったのだろうか。誰ひとり席に着いた私に近寄ろうとする女子はいなかった。


一人、心配そうに近寄って来た男子がいた。


「分かるぜ気持ち。跡部って横暴だよな」
「あなたは・・・」


花本くんだった。確か景吾坊っちゃまにトラウマを持つテニス部員。


ああ被害者は私だけじゃない、といくらか心が穏やかになった。

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