※彼女死ネタ



変わっていく季節は俺の目に何も映さなくなった。空の蒼は灰色になり、浮かんだ雲はもう流れない。屋上に横になっても始終よみがえるのは細い肩の少女ばかりだった。


俺の彼女。

何よりも大切でいつの間にか自分の笑う理由になっていた少女。



彼女はもうすぐこの世から消えてしまうらしい。







サヨナラの宣告は突然だった。

『持ってあと三ヶ月なんだって。我慢出来なくて聞いちゃった』

おどけたように話す彼女の頬の涙の筋はもうずっと消えていない。

『雅治の全国大会、見れてよかったよ』

ふざけるな。あんな負け試合でよかったなんて言うな。次は絶対勝つって決めてたんだ。病弱なお前を試合で笑顔にするって思ってたんだ。なあ、柳生とのダブルス、もう一回見たかったって言ってたじゃろ?何でそんな、諦めたみたいに笑って、


『雅治と同じ高校行きたかったな』

『何で、過去形なんじゃ』
『もっと背が伸びるんだろうね。筋肉もつくんだろうね』

『・・・自分で見ればいい』

なあ話聞けよ。一人で先に進むんじゃない。俺はここにいるし、お前もそこに確かにいるのに。

そっと彼女の頬に手を伸ばした。いつだって俺より温かい。彼女は気持ちよさそうに目を閉じる。どうしてそんなに穏やかでいられる?なあ。

頬の丸みはすっかり無くなっていて、身体も一回りも二回りも小さくなったような気がする。俺がでかくなったわけじゃない。消え入りそうな声で『飯、ちゃんと食わな』と言ったら『雅治もね』と軽く笑われた。そう言えば元気なときはこいつ俺の倍食べることもあった。奢る約束だったのに財布がピンチでヒヤヒヤしたんだった。今なら何だっていくらだって奢ってやる。どこにだって連れてってやる。


だからこれからも一緒にいてくれよ、頼むから。


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