未知との遭遇(忍足) | ナノ

「はい多数決により忍足くん王子役にけってーい!」
「・・・ん?」
「これにてシンデレラの配役全部埋まりました!めでたしめでたし」
「は?え、ちょ」

ホームルームで今度の文化祭でのクラス別出し物を決めとる時やった。窓から校庭に猫が迷いこんどるのが見えて、それに気い取られとったらいつの間にか自分の運命が決められとった。何やこれ。

「ちょい待ち!俺が王子てどういうこっちゃ!」
「忍足くんが話し合いに参加しないのが悪いんですー反論は認めませーん」
「や、向き不向きっちゅーもんあるやろ」
「いいじゃん忍足くんが王子役!関西弁王子とか斬新だって!ねー?」
「ねー」

いや何が?ちゅーか学級委員以下女子の大多数に異様な一体感を感じる。男子は妙に大人しい。どうなっとるんこれ。呆然としとったら学級委員が女子を一人ずいっとこっちに押し出した。向けられた視線が何となく熱い。

「じゃあシンデレラ役のヒメと王子役の忍足くんで色々打ち合わせしといてね!」
「え」
「忍足くんよろしくね!あたしあんまり演技自信無いんだけど、頑張るから!」

ヒメ、と言うのは確かこの女子の愛称やった。男子の話によく登場する子。一瞬何が何やらまるっきり分からへんかったけど彼女の背後に控える女子の目に見えん圧力で俺は全てを察した。

一丸となってこの子を俺とくっつけようとしとるんや。大方男子にも事前に話をつけて。道理で氷帝にしては芝居のチョイスが幼稚やと思た。そこから計画しとったんか。


そう推察した時点で自分自身の感情が恐ろしいほど引いてっとるのが分かった。つまりこれは全部俺のための茶番劇。愛くるしいと評判のヒメちゃんの恥じらう顔にもげんなりした。駆け引きってアリやと思うけどこれ悟られた時点でアウトやろ。こんな計画に乗ったクラスの人間も薄っぺらく見えた。


「忍足くん?」
「あっ、ああ・・・よろしゅうな」

面倒なことになった。あかん心を閉ざしたい。


ホームルームはそのまま演劇の話し合いに移行した。裏方はそれぞれ打ち合わせしとるけどヒメちゃん他キャストのやつらはのほほんと談笑。やったー上手くいったーとかなんとか話しとるんやろか。なんや自分がどんどん冷めてっとる気がする。まあすること無いみたいやし本でも読むか。ぼんやりそんな事考えとった、ら。


「忍足くん」


聞き慣れん声で呼ばれて顔を上げるとクラスでも結構物静かな感じの女の子がメジャーを持って立っとった。たぶんこれが彼女と俺の初めての会話やったから少し驚いた。ちょっと押しが弱そうで普段男子と話している姿を見たことが無い。そんな女子やった。

「何や?」
「私忍足くんの衣装係になったから。サイズ知りたいんだけどいいかな」
「ええけど・・・自分衣装とか作れるん?」
「暇な時とかに裁縫やったりするくらいだけど」
「それだけでも凄いで。家庭的なんやなあ」
「誉めても何も出ないよ」

お、笑った顔なかなか可愛い。でも同時に俺と話すのなんかこの子には不本意やあらへんのかな、と思った。シンデレラだって強行採決みたいやし、役者の枠を占めとる女子はみんなヒメちゃんみたくクラスの中心グループやった。まあキャラじゃないて言えばそれまでやけど、控えめの代表格みたいなこの子なんかは実際裏方に流されただけやろ。ほんま女子てこの辺やっかいやな。ゆっくりとメモ用紙を取り出す彼女に一方的な哀れみを感じた。

「忍足くん服のサイズどのくらい?」
「ん、まあLかLLやな」
「大きいもんねー。パンツは?ウエストとか覚えてる?」
「どうやろ・・・すまん、あんま記憶に無いわ」
「大丈夫」


それにしてもこの子結構しっかりしとる。普通こういう大人しい女子はテニス部のヤツとは気軽に話したり出来んもんやけど、今までに無いくらい堂々としとるわ。ちゃんと俺の顔見て話すし新鮮。自惚れとちごてこれが出来る女の子意外と少ない。


もしかして男に興味あらへんのやろか。


俺がそうやって色々考えとる間彼女はひたすらメモを取っとった。そして突然顔を上げた。

「忍足くんちょっとバンザイして」
「は?」
「いいからほら早く!」

何か言う間も無く強制的に腕を上げさせられる。彼女は冷静な表情でメジャーを伸ばし


ぐるりと俺の胸に巻き付けた。


「ちょっ、何や!」
「何って胸囲を計ってるんだけど。動かないでね」
「っ・・・」

せやけど落ち着かん。メジャーを回す時は変な話抱きつかれたみたいに感じた。今やってまあ仕方ないけど胸ぺたぺた触られとるわけやし。人形みたいに白い綺麗な指やった。彼女の頭を見下ろすと予想外に近くて思わず目を反らした。

「胸囲は85ねー。次ウエスト」
「な、なあ俺自分でやっても構わへんけど」
「自分でやったこと無いでしょ。早く!」

腰に回された腕に目が釘付けになった。嘘やろこれ。何でこんなアグレッシブなん。珍種か、珍種やろこの子。腰の位置に女の子の頭あるとか勘弁して欲しい。目盛りを読むために顔寄せられると恥ずかしいような妙な気分になる。そいで合間にちょこちょこ挟まれる大きい瞳の上目遣いがなんかこう、やばいかも、うん。って何やねん。

「72.7センチ!忍足くん腰細いね」
「そう・・・なん?」
「うん。スタイルいいよ。憧れる」

頼むからそこでにっこり笑わんといて・・・!ほんま金輪際こんなんごめんや。俺顔赤くなってへんかな。しかもクラスのヤツらめっちゃ見てんねけど。ヒメちゃんごっつ睨んでんで・・・せやから上目遣い止めえや!あかんもう限界心臓持たへん今すぐこの子から離れんと俺もう


「次ヒップと股下いきまーす」


待て待て待て待て待て待て待て








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