表紙 | ナノ
なんでアイドルがこんなところに、とは思ったけど今はそれどころではない。咄嗟に私はサスケくんの手を掴んだ。
「サスケくん、その…ありがとう!」
自分で思う最高の笑顔を向けたはずだったのにもうそこにはサスケくんは居なくて。そういえば遅刻、と必死にサスケくんの後を追った。
「あ、えっと…おはよう」
「……」
「ホームルーム、間に合わないよ?」
「……」
気まずい、の一言だった。彼は確かにイケメンで学園のアイドル的存在だけれど見ての通り愛想はあまり良くない。良く言えばクールってやつなのかもしれないけど私は少し苦手だった。サクラやいのが何で惚れてるのか分からない、という部分もある。
それにしても彼はなぜ悠長にこんなところを歩いているんだろう?と言う私もちゃっかり彼の横に着いて完全遅刻フラグ。聞こえるチャイムの音に涙が流れそうになる。
「間に合わなかったね!あはは、残念!」
「朝からうるさい女だな」
「はい?」
「勝手にしてろ」
「え、え?待っ…!」
サスケくんはなんだか慣れた様子で、教室にではなく別の階段を軽快に上がって行った。もうホームルームは始まっているし、今堂々と教室に入ってもナルトやキバに笑われるだけだ。
よし、と決めて勝手にサスケくんの後を追った。どうせなら堂々と遅刻してやる。
「何着いて来てんだ」
屋上へのドアの前でサスケくんは動きを止めて振り向かずに冷たく言い放つ。
「あの、私も暇だし…」
「…ふん」
サスケくんはそれ以上は何も言わずにドアに手を掛けた。漏れてくる太陽の光に目が眩んだ。
「…勝手にしろと言ったのは俺だからな」
サスケくんはちょうど日陰になっている部分にごろんと寝転んだ。隣に行くのは何だかおかしいと思うし、私はとりあえずあの真逆に腰を下ろして目を閉じた。今、何の授業中なんだろうな。