「うわ・・・」
「す、凄まじいっす・・・」
「日本かここ?」


跡部ロイヤルホテルは想像以上にロイヤルだった。まず天井が高すぎる。大きなシャンデリアが翼を広げるように垂れ下がり、ピカピカに磨かれた床には高そうな絨毯が敷かれている。土足で踏むことが躊躇われたほどだ。

「お前らの部屋だが、先にチェックインするか?何ならスイートルームも用意出来るぜ」

跡部サンが受付ロビーを顎で示す。幸村警部が首を横に振った。

「俺たちは何処でも構わないよ。ああ、出来れば迅速に行動できるように下の方の階がいいんだが」
「分かった。二階のエレベーター付近の部屋を手配しておく。階段も近い」
「ありがとう。何から何まで済まないね」
「・・・事件が解決すると思えば何でも無え」


一瞬跡部サンの表情に影が差した。・・・跡部サン、表には出さないけど樺地が心配で堪らないんだ。きっとたくさんの人間のトップに立つには感情を圧し殺さないといけないことが多いに違いない。下を不安にさせないために。

珍しく俺の気持ちも引き締まった。絶対樺地とやらを見つけてやる!一警察のプライドが燃えたぎった。

その時。



「跡部ッ!!」
「・・・てめえら・・・!」

突如エントランスに若い男たちが雪崩れこんで来た。たいそう急いで来たようで例外なく息切れしている。

「誰だ!」

真田警部補以下俺たちは咄嗟に身構えた。この事件は箝口令が発動した特殊な事件なのだ。無闇に一般人に知られる訳にはいかない。

しかし跡部サンは心配無用、とばかりに言った。

「俺や樺地の同級生だった奴らだ。危険は無え」
「おいコラ跡部!樺地が消えたってどういうことだよ!何ですぐ俺らに言わなかった!」

小さなオカッパ頭の赤毛が跡部サンに噛みついた。そいつをたしなめるように丸眼鏡の男が割って入る。眼鏡の奥で鋭い眼光が煌めいた。

「・・・連絡取れへんからすまんけど執事のミカエルさんに聞いたで。何か事情があったんやろけど、俺らも長い付き合いちゃうん?」
「・・・忍足」
「そうですよ!俺と日吉なんか樺地とは幼等部からの付き合いなんですよ!?」
「おい鳳、俺を引き合いに出すな・・・まあ除け者扱いは気に食わないな」
「俺たちだって樺地が心配なんだぜ!ホラ、ジローも起きてやがる!」
「そうだC!樺ちゃんのこと教えてよ跡部!」


やたら背の高いヤツにきのこ頭、傷のあるヤツ、テンションの高い金髪・・・変な奴らばかりだが真剣に樺地を心配しているのだということがひしひしと伝わる。跡部サンが僅かに苦悶の表情を浮かべた。


「そこまで!」


いきなりパンッと手を打つ音がして一同はビクッと肩をいからせた。幸村警部だ。鶴の一声にロビーは静まり返る。

「ここはいつ人が来るか分からない。彼らに説明をするにせよ何にせよこんな場所で事件について話すことは許さないよ。跡部と捜査の打ち合わせもするし、一端俺たちの部屋に集まるのはどうだろう」

さっきまで騒いでいた男たちが一斉に跡部サンを見つめる。跡部サンはため息をついた。

「分かった。てめえらも同席しろ。ウチのホテルは全室ダブルだからこれくらいの人数何でも無え」

どんなダブルだ。


あ、と思い付いたように丸井先輩が幸村警部を見た。

「そうなると部屋割りはどうなるんだ?幸村くん」
「ああそうだね。どうしようか」
「そんなものは決まっている!」

ズイッと真田警部補が乗り出した。何だろう胸騒ぎがする。


「何かしでかす可能性を考えた組み合わせにしなければならない。朝起きられないヤツも一緒には出来ん。よって組み合わせは幸村と丸井、柳とジャッカル、仁王と柳生、そして赤也と俺だ!」


泣いていい?

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