現場に着いたのはもう日が落ちかけている頃だった。報告書を天才的な速さで仕上げた二人の刑事もすぐに追い付き捜査は開始された。落陽に染まった海が綺麗だなあと思っていたら、強い潮風で髪が踊り視界が遮られる。様々な色の髪の毛が風にそよぐ様はなかなか見応えがあった。もちろんジャッカル先輩以外。

「あ、仁王と柳生だ」

幸村警部が指差した先―――柳生先輩は砂場を散策しているようだった。仁王先輩は・・・駄目だ。砂で何か作ってる。こちらに気付いた柳生先輩が歩いて来た。

「ああ、みなさんお揃いで。よくぞ来て下さいました!」
「うむ。何か手掛かりはあったか?」

真田警部補の問いに柳生先輩は静かに首を横に振る。

「跡部くんが樺地くんを最後に見たのはこの辺りだということなんですが・・・足跡まですっかり波に洗われてしまっています。何かあっても流されてしまっているでしょう」
「そうか・・・」
「ここは潮の満ち干きが激しいようだ。海岸から遠い砂浜にもそれらしい形跡は無かった」

柳先輩も難しい顔をしている。幸村警部は平地側をじっと見た。

「砂浜を抜けた所の砂のついた足跡は風で消えている、か・・・仕方ないね。自然条件には逆らえない。血溜まりも無いし」


警部・・・


「そ、それにしても!」と丸井先輩が言った。

「こう暗くっちゃ捜査もし辛えな。直に真っ暗だぜこりゃ」
「確かに海で灯りも少ないっスね。一度捜査本部に戻って計画を練り直しますか?」


「その必要はねえ」
「!」

砂浜に歩いてくる一つの影。外ハネの髪に高い身長。あのシルエットは・・・


「跡部・・・サン」

ニヒルな笑みを浮かべた跡部サンは幸村警部の前まで来た。警部の微笑みもどことなくおかしい。

「まさかお前が動いてくれるとはな、幸村」
「俺たちは市民の安全を守ろうとしているだけだよ跡部。それはそうと何を言いかけたんだい?」
「ああ。お前らに捜査に専念してもらう為にな、海岸の俺様のホテルを無条件で使わせてやる。普段は商談に来た奴らを泊めてるんだが緊急事態だしな」
「マジかよ!!」

丸井先輩の瞳がいきなりキラキラと輝き始めた。ホテルという単語が高速で料理と結び付いたらしい。

「ありがとう跡部。とても助かる」
「フン、精を出すんだな」

かくして俺たちの潜伏先は跡部家のロイヤルホテルとなったのだった。


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