俺は切原赤也。職業は警察官・巡査。今はまだ駆け出しだけど署では期待の新人と専ら噂の種だ。

そしてその話題の俺がただ今絶賛張り込み中なのがここ「黒い白馬探偵事務所」。このふざけた名前の探偵事務所には警察学校の先輩が勤めている。木を隠すなら森の中。日頃の小さな事件の解決の鍵はきっとこういう所に埋まって、


「コーラを飲みながら何偉そうな独り言言ってるんですか君は」
「げっ柳生先輩」
「しかも君が座っているのは一応ウチの探偵のデスクですよ。ほら仁王くん君も何とか言いたまえ」
「プリ」


無駄だ。この探偵事務所唯一の探偵である仁王先輩は来客用のソファーに猫のように丸まってダーツを投げている。そんな適当な態勢で的に当たるもんだから世の中間違ってると思った。

「全くもう」と言いながら俺の空のコップを片しているのが探偵の助手である柳生先輩。仁王先輩が思いっきり普段着のシャツなのに対し、柳生先輩はいつでもかっちりとしたスーツでさながら執事のよう。こちらの方がまだいくらか探偵らしい。


この二人は警察学校でも優秀な人材だった。それなのに仁王先輩が探偵なんていう職種に転がり、エリートの柳生先輩がそれについて行った。周囲はみんな驚いて批判していたけど俺には何となく分かる気がする。そもそも仁王先輩が公務員とか有り得ない。


「それにしても切原くん。警察の制服のままで昼間からこんなとこに遊びに来て、警察官とはそんなに暇なものなんですか」
「やだなあ俺と先輩の仲じゃないですかー!固いこと言いっこなし!」
「甘えてはいけません。君たち公務員の一分一秒は市民の税金によって」


ピーンポーン



来客だ。この奇っ怪な探偵事務所にも依頼人なんて来るのか。俺は素直に驚いた。

仁王先輩は視線だけ動かして柳生先輩を見た。

「ほれワトソンくん応対しんしゃい」
「誰がワトソンくんですか」
「お前医者じゃろ」
「医者の息子です。そもそも私は君をホームズと認めた覚えはありません」


そう言いながらも柳生先輩は扉へ向かった。俺は職務怠慢がバレないようにとデスクの下に潜った。仁王先輩は微動だにしない。


そして柳生先輩がドアを開けた。

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