嘘・・・?

仁王先輩の言葉に一同は息をのんだ。白石サンも一瞬ギョッとしていたけど、すぐに余裕の笑みを作って見せる。


「な、何言うてるん仁王くん。こいつは正真正銘ホンマもんの忍足―――」



「忍足であることは間違いない。じゃけどそいつは・・・・・・昨日会ったモッサリ眼鏡のヤツじゃろ?」
「えっ!?」


俺も慌てて金髪忍足を見た。確かにさっきデジャブを感じたけど、従兄弟ならアリかって一人で納得していたんだ。言われてみれば目付きの鋭さとか、まさしく忍足サンのそれだ。


白石サンは何も言わない。俺たちの視線を浴びる中、金髪忍足が突然ハハハ・・・と笑い始めた。

「さすが、探偵サンには敵わんなあ。せやけどモッサリ眼鏡て他に言い方無いんかい」
「あっ!」


丸井先輩のガムが弾けた。

金髪男がサッとヅラを脱ぎ捨て、黒い髪が落ちてくる。軽く頭を振ってそれを直しながら眼鏡を取り出したその姿はもう紛れも無い、


「忍足!貴様何のマネだ!関与は厳禁だと言ったはずだ!」

真田警部補が大声を張り上げた。きた!俺の鼓膜にも被害がきた!ホール状のエントランスのせいで拡張された警部補の声の倍音が気持ち悪い。


フーッと白石サンがため息をついた。

「はあ、やっぱあかんかったか。ウチんとこのモノマネのプロにテレビ電話で御指南たまわったんになあ」
「堪忍な白石。迷惑かけてもうた」
「白石・・・!?貴様もグルだったのか!?」
「ちゃう」

忍足サンが静かに言った。

「あんな風に追い出されたかて、俺らは納得出来へんかってん。特に岳人とかうるさくてな。別にマズイことは喋ってへんで。ただちょうど白石たちがここ来るて聞いたから頼んでみたんや」


「じゃあ本物の忍足謙也は・・・」

幸村警部が言い終わらないうちにエントランスのドアがガラッと開いて誰かが飛び込んで来た。よほど速く走っていたのだろう。俺らが警戒する間もなく途中で絨毯に足を取られてそのままごろごろと転がり続ける。ちょうど忍足サンの足元で静止したそいつは・・・―――


眩しい金髪。そしてなんと両足をガムテープでぐるぐる巻きにされていた。


「ゆーうーしいいいい・・・・・・!!」

恨み深そうにすごい形相で足を掴むそいつに忍足サンは目を丸くする。

「何や謙也ここまで来たんか。その状態でどうやったら今のスピード出るん」
「執念に決まっとるっちゅー話や・・・寝とるうちにぐるぐる巻きにされるなんやこれ程に無い屈辱や・・・・・・あと匍匐前進」
「匍匐前進!?」


呆然としている俺の側で、柳先輩が静かに呟いた。

「彼こそが忍足謙也だ。・・・どうやら計画に邪魔で軟禁されていたらしいな」
「・・・ひでえ・・・」
「あれでも医者だ」


ふと怒りから我に返ったらしく、謙也サンはキョロキョロと周りを見渡した。

「白石・・・何やねんこいつら。俺全く事情知らんのやけど」
「ああ、謙也は初対面やな。こちらは立海警察署の警察官のみなさんと探偵さんたちや」
「警察!?」


謙也サンはむくりと起き上がり、ビシイッ!と白石サンと忍足サンを指差した。

「お巡りさん今の見とったやろ!?これ!この足完全に暴行罪やろ!どうかこの二人を現行犯逮捕「幸村くん知り合いのよしみで見逃してくれん?」
「しょうがないなあ白石、今回限りだよ」



・・・・・・。


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