資料が充実してるから、という理由で集合場所は柳先輩たちの部屋になった。二階に向かう俺の足取りは鉛より重い。何が悲しくて真田警部補と同室・・・しかもダブルベッド。せめてツインの部屋くらい入れろよ跡部家。いや跡部サンは一人一室でもいいと言ったんだ。それを「そこまで一般人の世話になるわけにはいかない!」と真っ向から拒絶したのも真田警部補だ。ふざけんな今からでも遅くない署に返してくれ。なんて言えるはずもなく俺はもはや生ける屍と化していた。

「赤也、部屋には男でも寝られるサイズのソファーが置かれているそうだ」
「柳先輩!」
「ただ弦一郎が眠るには少しばかり狭いらしい」
「・・・」

こんな豪勢なホテルにまで来てソファー寝とか・・・。丸井先輩は憎たらしい微笑みを俺に向けてから幸村警部にスキップで寄っていった。

「ゆっきむらくーん!俺らは一緒にベッドで寝れるよな!」
「ふふ、いいよ。一緒に寝ようか。くれぐれも寝相には気を付けてね」
「う、うん・・・」

畜生あの赤いブタめ!はいはいそりゃ丸井先輩と幸村警部が一緒にオヤスミなんて可愛いもんでしょうよ!違和感無く仲良くフカフカベッドでおねんね出来るでしょうよ!他を見てみると柳先輩とジャッカル先輩の部屋は参謀の一睨みで円満にジャッカル先輩のソファー行きが決定していた。柳生先輩は・・・あれ?キョロキョロしてる。そういや仁王先輩どこ行った。


「ここだ」

跡部サンがカード式のルームキーで207の部屋を開けた。こんな緊急でなかったら指紋認証式のキーもかけられるらしい。

個室もかなりきらびやかだった。え?これダブル?キングサイズの間違いじゃねえの?って感じのベッドが一つ、あとこれもかなり大きめのソファーが幾つか。なんだこれなら俺くらいの体格なら全然寝れる。ちょっと気が楽になった。


そして全員がベッドなりソファーなりに腰掛けたところで、跡部サンが同級生組に事の顛末を説明した。



「・・・じゃあ樺地に関しては何の手掛かりも無いってことか・・・?」

チビの赤いオカッパ、確か向日というヤツが絞り出すように言った。他の同級生組はやるせない沈黙を纏っている。

「現時点では、の話だ。まだ絶望的じゃねえ」
「でもこれから日が経つほど証拠ってのはどんどん少なくなってくんじゃねえのか!?跡部ん家の警備隊でも無理なら、もう・・・!」
「宍戸さん・・・」

勢いで立ち上がった宍戸という傷のある男を鳳とかいう長身が諌めた。




「今日までとこれからは同じではない。決して」

幸村警部が静かに、でも力強く言った。

「明日から俺たち警察も動く。探偵たちもいる。必ず進展はある。焦りに目が眩まなければ」
「警部・・・」


全員が息を呑んだ。


ただの希望的観測でしかないはずだ。でも幸村警部が言うだけで言葉が現実味を帯びてくる。この人にはそういう力がある。


柳先輩も頷いた。

「まだ現れていない手掛かりは必ずある。明日の行動リストを作ってー・・・」


バンッ

不意に勢いよく扉が開き、俺たちの視線は入り口に向かった。


そこにいたのは蒸発していた仁王先輩だった。僅かに息が乱れている。手には白い手袋をしていて・・・ん?何か持って、

「見つけた」

仁王先輩の目が据わっている。


「樺地からの・・・ボトルシップぜよ」

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -