迷わない(イタチ) | ナノ


私は同じ委員会のイタチ先輩が好きだ。男だけど美人で優しくて有能で、誰もが憧れるイタチ先輩。出来ればお近づきになりたくて同じ委員会にまで入っちゃったけど、これでいいのかなって思うときもあるの。


「・・・って、聞いてますかイタチ先輩!」
「・・・・・・あ、ああ。今月の収支計画のことだろう?」
「・・・・・・」
「悪かったよ、ちゃんと聞くから」

申し訳なさそうに眉を下げるその顔も麗しい。でもこんな感じで、イタチ先輩ったら私が話しててもたまに上の空だ。そうじゃなくてもたいてい何を考えてるか分からない。掴みどころが無くて、恋愛にも興味無いみたいな。

イタチ先輩は人当たりはいいけど本心はいつもどこか遠くにある気がする。本当に心を許せる人もあまりいないみたいだ。私を頼って欲しいけど、私なんていつまで経っても先輩のただの後輩で。


つらい。脈の無い恋に一喜一憂するのは悲しい。イタチ先輩の場合恋にも届いていないかも。人間として近づける気がしない。

あれ?私って先輩のどこが好きなの?本当に先輩が好きなの?考えれば考えるほど分からない。これ恋って呼べるの?まずい、頭がごっちゃごちゃに―――


「クスッ」
「・・・・・・」

突然誰かが小さく笑う声がした。イタチ先輩だった。窓の外、校庭の何かを、見ている。

「っ・・・」

息を呑んだ。先輩は、滅多にお目にかかれないくらい優しい顔つきで笑っていた。見ているこっちが顔を赤らめてしまいそうな笑顔。見ているものが本当に愛しいってことが、その目付きの柔らかさからひしひしと伝わる。

先輩にここまでの顔をさせるなんてどこの楊貴妃!?さっきまでの複雑な感情も重なって、ムカムカしてきた私はわざと大きな声で先輩を呼んだ。

「イタチ先輩!」
「っ・・・・・・どうかしたか?」
「そんな嬉しそうに一体何を見てるんですか?彼女さんでもいるんですか!?」
「あ、いや・・・」
「怪しい!!」

ぐいっと先輩の視線の先に回り込んでみて拍子抜けした。校庭にいたのはサッカーをするうちのクラスの男子だけだった。ちょうどクラスの問題視が、クラスのアイドルに怒鳴りかかっているところだった。

「先輩、何を・・・」
「別に」
「あっ」

もしかして


「うちはサスケ・・・?」
「・・・・・・」

驚いたことに先輩は少し困ったような顔をしていた。間違いない。今先輩は、私の前で生の表情でいる。

「弟を・・・?」
「ああ。笑うか?」
「笑いませんけど・・・」

弟をあんな顔で見るんですか?もしかしてブラコンなんですか?とは聞けなかった。でも先輩は優しい顔のまま、そっと私に微笑んでくれた。

「サスケ、今まであんな風に喧嘩する友達はいなかったんだ」
「なんか違う感じしますもんアイツ。何でも出来ちゃう!みたいな」
「それは違うな」

先輩はまた、窓の外に目をやった。とろけるようなお顔で。

「サスケは何でもすぐ出来るわけじゃない。出来るようになるために努力をしっかりするんだ。俺たちには見えないところで」
「・・・・・・」
「たまにこちらが心配になるくらいだ。意地を張って平気で無理をするから・・・でも今の友達は、そんなサスケも分かってるみたいだな」
「・・・・・・」
「良かったよ」


ああ、私は何を下らないことを考えてたんだろう。私はイタチ先輩のこういうところが好きなんじゃないか。ごくごくたまに見せるこういう生身の表情が、溢れでる優しさが、先輩の魅力なんじゃないか。先輩のこういうところを見つけるのが、すごく嬉しいんじゃないか。愛しいんじゃないか。

先輩、もう私迷いませんよ!とりあえず目下のライバルはうちはサスケ!

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