恋人は忍者 | ナノ


夜中にふと目が覚めた。周りはまだ暗くて、外では風がごうごうと唸っている。もう一度寝ようと思ったのだけど、時計のコチコチいう音がやけに耳についてしまう。どうしたものかと思ううちに目が慣れて、隣で静かな寝息をたてる彼の顔が至近距離で見えてしまうようになった。これは困った。ますます眠れない。

一応隣の布団なんだけど、お互い枕をぐっと近づけているから手を動かせばすぐ身体に触れてしまう。ネジの呼吸とともに規則正しく掛け布団が上下する。そんな近さで見るネジの顔はいつまで経ってもなれない。


睫毛が、すごく長い。眠っている彼は驚くほどあどけなくて、ほんの小さく開いている口がとても可愛い。無邪気な顔しちゃってまあ。ふふふと笑うと、突然ネジがうっすらと目を開けた。

「んっ・・・」
「あ、起こしちゃった?」
「ねむれ・・・ないのか?」

呂律が上手く回っていない。普段のネジからは想像出来ないようなとろんとした眼差しがいとおしくてたまらなくなる。お互い声を潜めていて、それなのに風に負けずはっきり聞こえた。

「大丈夫、寝てていいよ」
「・・・・・・」
「ネジ?」


ぐいっ

ネジが私の身体をぎゅっと抱き寄せた。身体が完全にネジの布団におさまる。ネジの胸のあたりに顔がきて、ドキドキする心臓の音が一気に速まった。頭から爪先までネジにぴったりくっついてしまっていて、二人の体温が触れて溶け合うように感じた。


「・・・ネジ?」
「なにか・・・話してやろうか」
「いいよ、眠いでしょ」
「眠くない」

嘘だ。まだネジにしては話すのがゆっくり。

「任務の話がいいか?」
「いや。最近のネジの任務こわいもん。明るいときに聞きたい」
「・・・それもそうだな」

クスッと笑うネジの吐息が額にかかる。あんな風に言ったけど、こんな状態で怖いものなんてあるわけがないのに。


「近頃・・・考えることがある」
「え?」

まどろみの中のネジは、一言一言を噛み締めるようにそっと話した。

「お前と・・・一緒に暮らしたらどんな感じだろうかって」
「えっ!?」
「きっと毎日が騒がしいんだろうな、お前はよく物をなくすし」
「悪かったな」
「だからきっと俺と相性がいいんじゃないかと思った・・・俺は何かを探すのが得意だから」


えっ。
私の顔にサッと熱が差した。眠くて自分が何言ってるか分かってないのかな・・・。私の動揺に気付かないのか、ネジは続ける。

「あと・・・お前はよくペットを飼いたいと言っていたが・・・」
「う、うん」
「犬は嫌だな・・・キバが寄ってきそうだし」
「・・・・・・」
「猫・・・も嫌だな。畳や柱が傷つきそうだ」
「・・・じゃあ鳥とか?」
「鳥・・・か」


ネジは言葉を切って、私の髪を優しく撫でた。そこでハッとした。確かネジの呪印の意味って。

「鳥は・・・」
「ネジ、ごめん・・・」
「鳥は、本来飛ぶものだから・・・わざわざ籠の中にいれることもないだろう」
「・・・・・・」
「自由な空でこそ、鳥は鳥らしくいられるものだ」
「・・・うん」

ネジの手つきが遅くなる。やっぱり眠いみたいだ。

「ウサギなんかは・・・まだマシだろうな」
「ウサギ?さみしいと死ぬあのウサギ?」
「それ、本当なのか?」
「分かんないけど、それならちょうどいいや。私もネジがいないと寂しくて死にそうだもん」
「・・・ほう」
「あっ」

そこで一際強く腰を抱かれ、顔を少し上向きにされた。額に優しく唇が降りた。

「っ・・・」
「そんなの、俺も同じだ」
「・・・?」
「お前と離れてる間は、俺も・・・」


すう。

言葉の先が寝息に変わり、ネジの手が力なく布団に落ちた。その先が聴きたかったけれど、仮にも上忍の日向ネジが私の隣でこんなに気を許して眠ってくれたことが嬉しくて、ネジの呼吸のリズムをじっと聞いていた。やがて意識を手放すまで、ずっと。


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