恋人は忍者 | ナノ


多くの先人達のように華々しく、或いは大仰な前置き無く瞬間に、日向ネジは戦死した。彼が後に火影となったうずまきナルトとその妻を守ったことを賞賛する声も大きいが、勿論それは結果に過ぎず、彼はただ友を守り、愛した仲間たちに看取られながら死んでいった十八の少年だった。

当時の戦争ののち、彼の仲間の多くが私を訪ねてはなぜかネジの気持ちなるものを代弁していった。私が苦しめばネジが悲しむ、強く生きろと涙ながらに語った。ちゃんちゃらおかしい。ネジには私の苦しみなど全く関係無い。ネジは死んでいる。私が食を絶ち寝込もうが、皿を壁に投げつけて暴れようが、去る年月をいつまでも恨もうが、ネジには全く関わりのないことだ。ネジはもう死んでいる。

死者は遺してきた現世に心乱されるべきではないと思う。ようやく生の苦しみから解放された魂は、何にも侵されることなく、隔絶された美しい世界で、微睡むような永遠の安らぎに身を委ねるべきだ。ネジがいつまでも私を見ているなどという言葉は、だから受け付けられない。私なんぞを見ながら魂の休日を浪費するべきではない。

私は彼の短い人生を尊重する。遠い遠い場所で失われた彼の命を尊重する。彼の選んだ死に方を尊重し、守ろうとしたものを尊重する。記憶の中の彼に恨み言を吐くのにも疲れた。生者が死者にいくら泣きついても、きっと死者の鼻面に雨垂れが落ちる程度のものなのだろう。

だから私が同じ土俵に上がったときは覚悟してもらう。私が死んだときは彼にも私の人生を尊重してもらおう。私の望むものを尊重してもらおう。どれだけ面倒に思われても絶対に離さない。自我が消えても抱きしめ続けさせるし、あの世が破滅する日まで毎日浴びるほどのキスをするのだ。





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