「むり!もーむり!ダメ!頭ショートした!」
「ホラホラ諦めなさんな、あと10問も無いじゃろ」
「・・・なら雅治がやってよ」
「それじゃおまんのためにならん」

ムッとしながら睨む私をよそに、雅治はPSPに興じている。憎い。数学もだけど、一人飄々としている雅治が憎い。


溜めに溜めた数学の宿題に、ついに先生の雷が落ちたのは昨日のことだった。明日までに提出しないと冬休みに学校に呼び出すと通達された。何それこわい。

そんなこんなで放課後、数学が出来る彼氏の雅治の家に押し掛けたけどもう限界だ。私は白旗を掲げた。


「いや『白旗を掲げた』じゃないじゃろ。冬休み呼び出されてもええんか?俺ともデート出来なくなるぜよ?」
「どうせ雅治部活じゃん」
「それ禁句」

雅治はPSPをベッドに放り出し、「どれどれ」と私のノートを見た。顔が寄って、雅治のいい匂いがする。不意に胸がドクドク鳴り始めた。どうするのこれ余計集中出来ないんですけど。


「なんじゃ、本当にあとちょっとじゃないか。七問?しかもそんな難しくないナリ」
「・・・・・・あのねえ、雅治には難しくなくても私には違うとあれほど」
「頑張りんしゃいっちゅーことじゃ。終わったら何かご褒美やるぜよ」
「ご褒美?」

雅治の保護者目線が気に食わなかったところにこの発言である。私は少し意地悪な気分になった。フフン、と鼻で笑うと雅治はキョトンとした。


「そんなに言うならー・・・私が一問解くごとに、あんたが一枚ずつ脱いでいくってのはどう?」
「いいぜよ」
「いいの!!??」
「ちょい待ち・・・パンツ、ズボン、Tシャツ、カッター、ネクタイ、ガーデ・・・ブレザーも着とくか。うん、ちょうど七枚ナリ」
「いやいや自分が何言ってるか分かってる!?」

指折り数えた雅治に背筋が凍った。何コイツ、正気・・・!?じゃあ、私の宿題が終わった頃には、雅治は・・・・・・

「全裸じゃな」
「いちいち生々しいよ!」
「おまんが言い出したことぜよ。全く・・・男を脱がせて何が楽しいのやら」
「わかったよ!やりますよやりますよ!」


ムキになってペンを持った。どうやら今日の雅治はネジが一本抜けているみたいだ。バカなことしでかす前においとまするのが吉とみた。無心に手を動かしていると、再び雅治が顔を近づけてきた。

「ちょ、近っ・・・」
「おっ正解。ということは一枚じゃの」
「え」


はらり。

そんな効果音がつきそうな仕草で、雅治は華麗にブレザーを脱ぎ捨てた。たかがブレザー。されど一枚。


「なっ・・・まさか本気?」
「何を今さら。男に二言は無いと言うじゃろ」
「アンタの口からそんな言葉を聞く日が来ようとは」
「プリッ」


しかしどうやら本気らしい。私が問題を解く度、一枚一枚と雅治の衣服が脱ぎ去られた。しかも無意識に問題を解くスピードが上がってきた。いつになく冴えている自分がいるみたいだ。笑えない。


ついに雅治はTシャツ一枚と制服のズボン姿になった。

「なんか思ったより早くここまできたのう」
「ききき気のせいじゃないかな!!」

嘘でしょーマジなの?これ次どっち脱ぐの?やっぱ上?それとも・・・ああああ興奮して私の手が!よどみなく動いていく!!やめろ!!なんだか身体まで熱くなってきたみたい・・・


「お前さん、すごい汗じゃな」
「え゛」
「顔も真っ赤。そんなにムラムラしたんか?」
「んなバカなっ・・・」
「ふむ、正解」

うわあああ!

雅治はおもむろにTシャツを脱いだ。色の白い肌が目の前に露になる。ほどよく筋肉のついたバランスのよい身体がすぐ近くにある。自分でも背中をダラダラ汗が伝うのが分かった。まるで私のが危ない人みたい。

「っ・・・・・・」
「おまんも、暑そうじゃな」
「!?」

ギョッとした。雅治の手が私のカーディガンのボタンにかかっていた。

「何すっ・・・」
「暑いなら我慢せんで脱がんと。こんななるほど興奮したんじゃなあ。こっちが恥ずかしくなるナリ」
「違う!」
「どこが?息も乱れとるし」

確かに真冬なのに身体がカッカして仕方なかった。だからだ、だからなんだ。雅治の手がカーディガンを脱がせ終わって、シャツのボタンに向かっても、嫌だなんて言えないのは。そのせいだ。

「べんきょ、少し中断せん?」
「やっ・・・」
「素直じゃないのう」

フッと笑った雅治は膝立ちし、私に覆い被さるように一歩すすんだー・・・






ピッ

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ねえ雅治、今の『ピッ』って何の音?」
「や、別に何でも「ちょっと退いて」

ぐいっと雅治を押し退け、彼の脚があったところを見ると。

「何・・・?リモコン?エアコンのリモコン?エアコンなんていつの間に・・・」
「・・・ピヨッ」
「あー!設定温度24度!?バカじゃないのこんなん暑いに決まって・・・あ!だからアンタそんなカッコなのに震えてもなかったんだ!で?私には『ムラムラした』って?」
「・・・プピーナ」
「こんにゃろっ・・・!雰囲気と話術で騙したわけ!?許さない・・・このエロ男!!」
「まあまあ、特別に一問分サービスして脱いで「いらん!!!」







こんなんでも仁王くんお誕生日おめでとうございました。
20101204
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