「えーと・・・」

頭の上で二つお団子を作った女の子が若干困り気味の愛想笑いを浮かべた。


「最後にもう一度聞きたいんだけど二人は本当に知り合いなの?」

私とネジが同時に頷くと、テンテンはオカッパ頭のチームメイトと目を見合わせた。無理もない。私とネジはお互いにチラリとも顔を合わせようとしなかった。それは自己紹介の時も同じで、ガイ班との対面はいきなり淀んだ空気でスタートしてしまった。


「さて、事情はあらかた説明したな」

小隊長となったネジは、火影から預かった世界地図をよく見えるように広げた。

「これから半日で木ノ葉を抜ける。海岸線に出たら、定期便の船で華那に入る。夜明けの頃には乗れるはずだ」
「華那かあ・・・ちょっと楽しみだなあ」

テンテンの呟きを聞いてみんな目をしばたかせた。

「楽しみ?どうしてですかテンテン」
「えー知らないのー?華那の国って美形が多いって有名なのよ!華那って名前自体、初代皇帝の超美人のお妃さまから取ったらしいの。だから特に皇帝の一族はみんなすごく綺麗な顔なんだって!」
「国中の美人ばかり集めているからだろう。驚くようなことか」

ネジの呆れた声にドキリとした。この人もやっぱり美人には弱いんだろうか。美しい誰かに、胸を焦がすような恋をしたことがあるのだろうか。


「ネジったら!ね、名前も楽しみじゃない?」
「えっ」

テンテンが私に輝くような笑顔を向けた。さっきから、彼女はどうにかして私に喋らせたいらしかった。


「そ そうだね・・・」
「でしょ!?任務とは言えさあ、イケメンに見初められたりしたら〜ってちょっと思わない?告白とかされちゃったらどうする?」
「テンテン、」

ネジがテンテンにたしなめるような声をかけた。腕組みしていて、容赦の無い言い方だった。


「何よ!女の子同士の会話邪魔しないでくれますー?」
「馬鹿なことを話す前に任務のことだろう」
「分かってますー」


いいなあ。じわじわと胸からそんな感情がわき上がってきた。ネジと普通に話せるテンテンが羨ましかった。私も、テンテンみたいな素直で明るい子だったらネジともっと仲良くなれたのだろうか。




「とりあえず戦闘も考慮したバディを決める」

道すがら、ネジが切り出した。

「俺とリーが近距離タイプ、テンテンと名前が中距離以上タイプだから、」
「私はリーと組みたい」

言われる前に言ってしまった。ネジがジロリと私を睨み、その視線に怯みそうになる。だってネジは私と組むなんて真っ平だろうし、私もこれ以上嫌われたくない。


「ねっリー!」

勢いよくリーを見ると、リーはネジの方に控えめにチラッと目をやった。

「ハイ、僕はそれで構いませんけど」
「ほらね!決定!」
「勝手に決めるな。お前は俺と組むんだ」


えっ。

予想外の発言に、一瞬私は動きを止めた。


「な、なんで・・・?」
「なんでも何も無い。お前と組んだことがあり、戦闘スタイルを知っていてるのは俺だけだ。その理由で十分だと思うが?」
「・・・・・・」
「この任務には期限がある。実戦があるかも分からない以上、知った者と組むのが一番効率的だ」


なんだ、そういうことか。あくまで合理的な判断。それなのにまだ心臓がバクバクいっている。止められない。


「それはそうと、これからどういう風に動くんですか?」

リーがネジに尋ねる。

「一先ず椎家に向かう。華那に入ってそう遠くないところに一族の居住地があるそうだ。そこで話を聞こう」
「椎家は結構大きな民族なのよね?」

テンテンも思案顔だ。

「そうだ。昔から容姿が美しく、頭がいい者が多くて学者をよく輩出すると評判らしいな。役人の重鎮にも起用されている」
「へえ・・・」
「それゆえ、今回の妃嬪殺害には恨み、妬みの線もある・・・と五代目は見ている」


私は黙ったまま華那の国の国情に思いを馳せた。百近くある民族の勢力争い。後宮にいる妃達の中でも皇帝に相手をしてもらえる者はごく僅かに違いない。陰謀渦巻く後宮で、寵愛も無く過ごす多くの女達を思った。


「ねえ、ねえ!」
「?」

テンテンがつつ・・・と近くまで寄ってきた。小声なのは前を行く男たちに聞こえないようにだろうか。

「ネジ、アナタに何かしたの?」
「!?いや、別にそんなことは」
「だって明らかにおかしいじゃないアナタ達の態度。アナタもネジに対しては態度違うしさあ。ネジって取っ付きにくいかもしれないけど、最近は随分丸くなったものよ」
「はあ・・・」
「あ!ひょっとしてあたしたちに隠れて付き合ってるとか!?」
「ブッ・・・ゲホゲホ!」


あまりの衝撃に吹き出したあとむせかえってしまった。

「無い!絶対無いから!ゲホッ」
「・・・大丈夫?」
「大丈夫!大丈夫だからもうそんなとんでもないこと言わないで!!」
「わ、わかった・・・」


嫌い。

嫌いなんだ、そんな胸が苦しくなる冗談。




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