三強ズブートキャンプ(丸井?) | ナノ


「ブン太、ちょっといいかな」
「・・・ゆ、幸村くん?」


休憩中、板チョコを食べながらベンチで休んでいた時だった。突然凍りつくほど優しい笑顔を張り付けた幸村くんが目の前に現れ、俺は思わず身動きが取れなくなった。


「なななななんでございましょう・・・」
「この間の身体測定、また体重増えてたそうだね。62キロだって?俺より11センチも背が低いのに体重は1キロも重いってどういうことだい?」
「いやあのそれは」
「おまけに血糖値も平均以上・・・ねえ成人病って言葉知ってる?」
「でもホラ、俺テニスしてるしさ」
「俺だってしてるよね。伝統ある立海テニス部から肥満が出るとかホント洒落になんないから」
「まっまだ肥満までいってねーよ!」
「分かってるよ。だからそうならないための対策を練ろうと思うんだ。蓮二、」


そう言って幸村くんの背後からニュッと出てきたのは不気味な笑みを浮かべた参謀だった。何故か手に食べかけの板チョコを持っている。あれっ?と思って自分の手元を見ると、無い。俺の板チョコが無い!アイツ、いつの間に取りやがったんだ!?


「返せよ柳!」
「またお前はこんな高カロリーなものを・・・。自分の状況が分かっていないようだな」
「ああ分かってるぜ!テニスだってレギュラーとしてちゃんとやれてし、問題ないだろい?」
「それが甘いと言っている。無駄な脂肪がつけばそのぶん動きが鈍くなるのは目に見えている。ついでに言うとお前のその白い歯も虫歯になりやすくなるぞ」
「うっ・・・」

言葉を無くした俺に、柳は少し眉尻を下げた。

「別に特別なことをしろと言っているわけではない。運動は部活で十分やっているからな。あとは適度な食事制限だ」
「っ・・・そんなの、無理だ・・・!俺がダイエットなんて・・・ストレスで死んじまうって!!」
「その心配はない。ホラ」
「?」


柳はファイルからスッと一冊のノートを取りだし、俺に渡した。それはよく見ると小学生が使っているようなアニメ絵のもので、表紙にはカラフルな「おこづかいちょう」の文字が。は?

「なんだコレ」
「これからお前には収支を全てこれに書き記してもらう。余すところなく全てだ。そしてコレを併用するんだ」
「・・・?」

今度は柳はどこからかピンクの豚の貯金箱を取り出した。腹にデカデカと「丸井」と書かれている。どういう意味だ。

「この貯金箱にお前の持っている小銭を全て入れろ。常に持ち歩くのは紙幣だけにするんだ」
「えっ!?」
「つまり100円のノートを買って900円のお釣りがきた場合、その900円はこの貯金箱に預けてもらう」
「はあ!?そんなの無理だって!金すぐ無くなっちまう!」
「安心しろ。貯金箱の中身が1000円に達したら、俺たちが千円札と両替してお前に渡す」
「なんのためにそんなこと・・・!」
「分からないのか?これは心理作戦だよ」

幸村くんが腕組みをして俺を睨んだ。無駄に怖い。

「お札を崩すと減りが早いってよく言うだろ?じゃあ逆にお札ばかり持ち歩くようにしたら使わない。これはお前の財布にも優しい作戦だ。もちろん無駄なお菓子は買わない前提でね」
「・・・そんなの、俺が誤魔化せばいくらでも」
「あ、お前の親御さんにも話は通してあるから、収支を誤魔化してもすぐバレるからね。そしてこの計画を管理するのは」


「俺だ」
「ゲェッ!?」

満を持して、という風格を漂わせて真田が俺の前に立ち塞がった。

「俺が全面的にこの作戦の指揮をとる」
「いやいやいやどんだけ大事にするつもり?」
「朝と夕方、お前の小遣い帳と財布の中身をチェックする。この時に小銭は貯金箱に入れる。レシートは必ず添えろ。誤魔化しは効かない。心配せずとも、貯金箱は俺が責任持って管理することを約束しよう」
「と、とりあえず落ち着けよい・・・」
「隠れて菓子を食らおうなどと考えるなよ。家の方にも糖分を与える量は加減するように言ってある」
「い いやだ・・・」
「そうと決まれば早速実行だ!財布を持ってきて記録をつけろ!」
「いやだアアアア!!」


気づけば俺はコートから逃げるように走り出していた。嫌だ嫌だ嫌だ。何なんだいきなり。俺そんな悪いことしてるか!?(まだ)人に迷惑もかけてねーぞ!おやつを取り上げられるなんてまっぴらだっつーの!



「先輩っ」
「!・・・なんだ赤也かよ」
「なんだって何すか!」

昇降口の陰で息を切らして立ち止まった俺に声をかけたのは赤也だった。なぜか哀れむような顔をしている。誰を?俺を。コイツにこんな顔されるとか心外すぎる。


「なんの用だよ・・・!俺は今虫の居どころが悪いんだよ!」
「あっそういうこと言うんだ〜残念だな〜!せっかく先輩にプレゼントがあるってのに!」
「・・・なんだ?」

ニシシ、と笑った赤也はポケットをガサゴソとまさぐった。開いた手のひらには、可愛い色したキャンディが五つも!

「おまっそれ!」
「へへ〜ん!さっきの先輩たちの話聞いて、丸井先輩が可哀想だと思ってね。俺からの日頃の感謝の気持ちっス」
「でかした赤也!俺はお前が大好きだ!」
「きもっ」


この際何でもいい。万歳だ!急いで赤也からキャンディを受け取り、せわしなく包み紙を開ける。美味しそうな甘い香りに喉が鳴った。ああコレ!俺が欲しかったのはコレだよ!


「いっただきまー」

ガシッ


へ・・・?


突如右腕を背後から抑えつけられた。恐る恐る後ろを振り向くと、般若のような顔をした真田が俺の腕をひっつかんでいる。動けない。ものすごい握力だ。


「な、なんで・・・」
「隠れて菓子を食うなと言っただろうバカめ!お前はグラウンド100周だ!」
「なっ!」
「でかしたぞ赤也。お前の今日の筋トレはそれぞれマイナス50回にまけてやる」
「ラジャッ!」
「っ!?」

ハッと赤也を見ればプイッと視線を逸らされる。が、その手は明らかにガッツポーズを作っている。
ま まさか

「部員にはお前がつまみ食いしているところを見かけたら報告するよう言ってある。褒美つきでな。無駄な抵抗をするな!」
「てんめえ赤也アアアア!嵌めやがったなコノヤロー!!」
「へーん!引っ掛かる方が悪いんすよ!ていうか先輩の意志が弱いのが悪い?みたいな?」
「クッソオオオ!恩を仇で返しやがって!!」
「静かにせんか見苦しい!幸村を呼ぶから大人しくしていろ!」
「イヤだああああああああ!!!」









「っていう夢を見たんだけど幸村くん俺に怨念送ったりしてない?」
「何があったか知らないけどそうとうキてるね」






15万打ありがとうございました!(20101121)
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