分かってねえな(シカマル) | ナノ
「ねえ、これとこれどっちがいいと思う?」
「ブッ」
ぼへーと自販機で買ったアイスコーヒーを飲んでいたところにフリッフリの下着なんかつき出されたもんだから、危うく中身を吹き出しそうになった。キョトン顔の彼女が持ってきたのは白とピンクの色違いのブラジャー。どっちも同じじゃねーか。その前に俺ら今制服だぞ!周りがジロジロ見てんだよ!
「知るかよ!つーか何でこんなとこまでそんなモン持ってきてんだよ!何のために俺が店まで入らなかったと思ってんだ死ね!」
「知るかよって何よー!シカマルのためを思って聞いてんじゃん」
「余計なお世話だ!」
「ふーん、シカマルは白とかピンクより黒とかのがいいのか」
「ひとっっことも言ってねーだろ・・・」
まあいいや、下着はまた今度にしよーと彼女が店に戻ったので俺はホッとため息をついた。全く女ってのは気まぐれだ。つーか何でこんなに買い物長いんだ?そしてなぜ俺に付き合わせる?こちとら放課後で疲れてるんだよと言っても聞きやしねえ。
「シカマルシカマル!次三階!」
「なっ、まだ行くのかよ・・・」
「うん、新しいワンピースが欲しいんだよね!シカマル好みの大人っぽくて色気ムンムンのやつ」
「おい妄想力逞しすぎるぞ」
しかも寸胴のお前がそんなの着たら・・・・・・なんてことを言ったらまたギャーギャー言い始めるからやめておく。今度は俺まで店に引っ張りこまれた。女向けの服や雑貨、音楽に溢れたこの空間では俺は完全にアウェーだった。嬉々として洋服に向かう彼女を見ながら、俺は深く息を吐いた。
大体女ってのは何でそんなに見てくれを気にするかねえ。ファッションしかり濃すぎる化粧しかり痩せすぎな体型しかり。こいつだってしょっちゅう口癖みたいに「痩せなきゃ」とか言ってっけど、んな必要どこにもねえだろう。体型なんか個人の自由だが、俺にとっちゃあ食事制限してる辛そうな顔見るより、腹いっぱい食った後の幸せそうな「ごちそうさま」が聞ける方がずっといいわな。
「シ・カ・マ・ル!」
「おわっ!」
「またぼーっとして!ねえねえこの花柄のとこっちの花柄のならどっちがいい?」
「は・・・?何が違うんだ?」
「ここのラインの色が違うの!そんなに私の買い物に付き合うのめんどくさい?」
「だからそう言ってんだろーが」
「もう!」
勝手に怒鳴って勝手に拗ねて。本当女ってめんどくせーよ。それでもやっぱり好きになっちまうんだから、つくづく世の中ってのは分からねえもんだ。
しっかし買い物だけは勘弁だな。これいつまで続くんだ?さっきからサロペだのロンパだのコイツが何言ってんのか謎だわ。ダメだもう俺帰りてえよ。
「ねー、やっぱ黒のラインのやつがいいかな?」
「そーだな」
「でも茶色も可愛いよねー」
「そーだな」
「ああ!でもあのスカートも可愛いよね」
「そーだな」
「・・・・・・じゃあシカマルは、私なら何着ても可愛い?」
「そーだな」
「・・・・・・」
「・・・・・・え?」
「・・・・・・」
「・・・え?あれ?今お前俺に何て言って・・・え?」