気づいてしまった(宍戸) | ナノ


最近よく視線を感じるな、とは思っていた。でもクラスも違うし話したこともないし、何より私は彼と違ってこれといった取り柄のないごく普通の生徒だから、気のせいだと思っていたんだ。



「俺っ、お前が、好きだ」
「・・・・・・」
「よかったら・・・付き合ってほしい」


え・・・え?

目の前で恥ずかしそうに頭をガシガシかいているのは紛れもなく宍戸くんだ。夢ではない。幻でもない。テニス部レギュラーとして学園でも有名な宍戸くんだ。

だからこそ何かの間違いだと思った。だってこれは私が人生で初めて受けた告白なのだから。


「あ、あの」
「あ、ああ、何?」
「何で、わたしっ・・・?」
「えっ?」
「宍戸くんみたいな人が何で私なんか・・・これ、バツゲーム?」
「はあ?誰がバツゲームなんかで告白するか!」
「そっ、そうだね、ごめん・・・」
「・・・そんな余裕ねーよ」


宍戸くんはチッと舌打ちした。それに驚いて私は肩をすくめた。

「わ、悪い。怒ったわけじゃねえ。そうだよな、いきなり『好きだ』なんて言われても困るよな」
「ごめん・・・」
「何でお前が謝るんだよ」

ハハッと宍戸くんが笑った。思いっきり笑って目が無くなっていてドキリとしてしまった。


「俺、引っ込み思案な女って苦手だったんだ。すぐ傷つきやすそうで面倒だし、泣かれたら困るし」
「えっ・・・」

それじゃあまさしく私だ。現に今も宍戸くんと目が合わせられない。もしかして宍戸くんは私の性格を勘違いしているんじゃ・・・


「ずっと、そう思ってたんだけど」


うつ向いていても分かる。宍戸くんが私を見ている。そう考えるだけで顔が火照った。

「お前さ、吹奏楽部だろ?結構テニスコートの近くで練習してたから見えてたんだ。その時は大人しくて気が弱そうな女子だなって印象だったんだけど」
「うん・・・」

その通りだ。

「だけどこの前、お前が泣きながら後輩叱ってるの見てさ」
「!」
「女の泣き顔は嫌いだったのに、お前から目が離せなかった。普段とのギャップかな、いつの間にか気になってた。・・・好きになってた」
「・・・っ」


まさかもう一度告白されるとは思っていなくて、息をのんだ。宍戸くんは真っ直ぐ私を見ていた。


「付き合ってっての、撤回する。まず友達になってくんねーかな。俺のこと知ってほしいんだ」
「・・・」
「ダメか?」
「あの、」


じゃあ、今日一緒に帰りませんか?


そう言ったら宍戸くんは目を見張って、それからくしゃっと笑った。その笑顔を見た瞬間きゅんと胸が締まった。どうしよう、私もう好きになっちゃったかもしれない。




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