cuteのちsexy
いつもらなら自分から起きてくるはずのフランが起きてこない。
二階に向かって名前を呼んだが何の反応も返ってこなかった。
このままだと折角作った朝食が冷めてしまう。
私は仕方なく彼の部屋がある二階へ足を進めた。
彼の部屋の前に立ち、コンコンと軽くドアを叩いた。
なにも反応がない。居候とはいえ、年頃の男の子の部屋に勝手に入るのはよくないかなと思い、いつもフランからの返事がなければ入るのは止めてたけど…
温かい朝食のためだ。
私はノブに手を伸ばし、静かにドアを開けた。
思ってたとおり、彼はまだベッドの上で熟睡中だった。
テレビの前には出したままのゲーム機と開いたままの攻略本が置いてあった。
随分、遅くまでやっていたのであろう。
テーブルには空のポテチの袋と飲みかけのペットボトルが散乱していて、食べながらやってましたと言わんばかりだった。
なるほど、それで起きてこないわけだ。
私は彼の寝坊の原因から、未だに気持ちよさそうに寝息をたててるフランに視線を移した。
『フラーン、朝だよー。早く起きないとごはん冷めちゃうよー。』
ベッドの脇に座り呼び掛けてみる。
まったく反応がない。
さて、どうしたらよいものか。
彼を起こすのは一筋縄ではいかなそうだ。
私は彼の頬を人差し指でぷにぷにと押してみた。
スベスベの肌は柔らかく、心地よく押し返してくる弾力のある頬。
気持ちいい。はっきり言って癖になりそうな感触だった。
髪と同じでサラサラした翡翠色の長い睫毛。
柔らかい頬。薄桜色した唇。
ギュッと縮こまり丸まって眠る姿。全てが可愛く見えた。
一回くらい、いいよね?
私は羽織っていたパカーの右ポケットに手を入れてケータイを取り出し、カメラを起動させた。
そして、可愛く寝ているフランに向かってケータイのカメラを向けるとシャッターボタンを押した。
―――カシャッ―――
「人が気持ちよく寝てるって言うのに、姫はいったい何をしてるんですかー。」
気怠そうな声を出しながら私を見るフラン。
私のカメラに収まったのは彼の手の平のアップ。手相がしっかり読み取れるぐらいのドアップだ。
そう、私がシャッターボタンを押すと同時にフランは自分の手をカメラのレンズの前に掲げたのだ。
せっかくのシャッターチャンスだったのに…
私はそれはもう盛大な溜め息を一つ吐いた。
「溜め息つきたいのは寧ろミーの方ですー。」
フランはじとーっとした視線を投げながら身体を起こし、ベッドに腰掛けた。
『だって、フランが…』
「ミーがなんですー?」
少しトロンとしながら上目遣いで話してくるフラン。
寝てるときは可愛いのに、起きた途端に色っぽいに変わるのかよ。
なんて私は心の中で悪態をついてみた。
だいたいシャッターを切ったのだって…
『…フランが可愛いのがいけないんだ…。』
蚊の鳴くような小さな声でそう呟きながらフランを見た。
えっ…寝てる!?
起きていると思ったフランは、器用に座ったままの状態で再び眠りに落ちていた。
出会ったあの時からずっと、私はフランに振り回されている。
今朝は特にそれを強く感じたのであった。
(フランッ、いい加減に起きやがれぇー!!)
(ぐぅー。)
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