気づく
『今日も来てくれたんだね。』
「毎日来るって言ったろ。それとも王子に会いたくないわけ?」
『違うよ。来てくれて嬉しい。』
「うしし、いい子。」
『でもね、もうその姿じゃなくて大丈夫だから。』
「は?何言って…」
『ベルはもういないんだって分かってるから。大丈夫、もう自殺しようとしたりしないから。』
「……。」
『だから、もう幻術つかわなくて大丈夫だよ。フラン。』
私が愛した王子様はあの日死んだ。
いつも通りのチシャネコ笑顔で任務に向かった彼は朱く染まり、冷たくなって戻ってきた。
受け入れられなかった。彼がいなくなったという事実を。私は受け入れたくなかった。彼の傍に逝きたかった。
だから、何度も命を絶とうとした。
そして、優しいキミは私の為に王子様になってくれた。
最初は気づかなかった。本当に彼が戻ってきてくれたと思っていた。
でもね、気づいちゃったの。私の名前を呼ぶ声の優しさも、愛おしむように触れる手の温もりも、ベルじゃなくてフランだってことに。
私、気づいちゃったの。
『フラン、ありがとう。…もし、もう一つ私の我が儘を聞いてくれるなら、これからはずっとフランとして私を愛して。』
姫に笑ってほしくて、生きていてほしくて、ミーはベル先輩になりましたー。
ミーがベル先輩であるかぎり、姫は笑って生きていてくれる。
名前を呼べば嬉しそうに返事をしてくれるし、頬や頭を撫でれば甘えてきてくれる。
姫のためならミーは何にだって成れるんですー。
ミーの幻術は完璧で絶対にバレないって思ってたのに…気づいてたんですねー。
本当に気づいてたんですねー。
「我が儘じゃないですー。ずっと、ずぅーとミーが愛しますー。」
私は気づいちゃったの。キミへの気持ちに。
アナタは気づいていた。ミーの気持ちに。
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