永久の眠り姫

姫は愛する事をミーに教えてくれましたー。

ミーは今でも姫のことを愛してるんでーす。

それなのに姫はいない。

この世界の何処を探しても、もう会えないんでーす。

ミーの想いだけが置いてけぼり…。

姫、どうしてアナタを忘れる事を教えてくれなかったんですかー?






人の命は儚い。
まさしくそれは一寸の夢物語。





「姫が死んだ?冗談キツいですよー、隊長。」

「俺が冗談を言っているのように聞こえるのか?フラン。」


何時になく真面目な顔でスクアーロ隊長が言った言葉は、ミーを奈落の底へ突き落とすのに充分な力を持っていた。

姫が死んだなんて信じたくなくて、ミーはいつも通り彼女の部屋で帰りを待った。

隊長から受け入れがたい事実を知らされてから3時間後、ミーの所に堕王子がやってきた。


「姫の遺体が戻ってきたぜ。綺麗にされて、今、地下の霊安室に置かれてる。」


ひどくつまらなそうな面持ちで、ミーに告げる。


「行けよ。待ってるぜ、姫が。」



なんで姫が霊安室になんかに居るんですかー?

姫はミーが待つこの部屋に帰ってくるんですよー。



そう思っていたはずなのに、ミーはいつの間にか霊安室に居て、冷たくなった姫の頬を優しくなでていた。

「姫ー、いつまで寝てるんですかー?」


答えてはくれないと頭では分かっていても、ミーの心はそれを理解しない。

理解したくない。頑なに拒んでいる。

少しずつ乾き始めている姫の唇に、そっと口づけた。

柔らかいのに冷たいその唇に、悲しみが自然と湧き上がってくる。

溢れては流れ落ちる悲しみはミーの頬に幾筋の後を残した。


「姫ー…。」


起きてと願っては何度もキスをする。

永久の眠りについたお姫様は王子様の口付けでも目覚めることはなかった。


姫、ミーを独りにしないでくださーい。

ミーが姫から教わったのは、愛することだけ。

愛すべき人が居なくなってしまったらどうすればいいんですかー?

冷たくなっていく姫の安らかな顔が、ミーの腕の中で温かいぬくもりを放って眠っていた時と同じ表情だと気付く。


「なーんだ。そういうことかー。」


姫がこの世界にいないのならば、ミーが姫のいる世界に行けばいい。

そうすれば、ずっとずーっと姫を愛し続けられるから。

忘れる必要なんてないんですよねー?

だから、ミーに教えなかったんでしょう?姫ー。


恍惚な表情で、こめかみに銃口を当てる。


「姫ー。今、逝きますよー。」


トリガーを引くと同時に、静かに銃声が鳴り響いた。



眠りから覚めないお姫様のために、ミーは自分自身に真っ赤な花を咲かせる。

これがミーの愛のカタチ。



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